テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【1306話】「シッダールタ」 2024(令和6)年4月1日~10日

 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1306話です。

 「文殊丸」「行生」という2人の名前で、どなたかわかりますか。ヒントはどちらも曹洞宗に関わる方です。文殊丸は大本山永平寺を開かれた道元禅師、行生は大本山總持寺を開かれた瑩山禅師の幼名です。昔は幼い時に仮に名付ける名前や元服以前の名前を持つことがあったようです。

 さて、4月8日はお釈迦さまがお生まれになった日で降誕会(ごうたんえ)と言います。今から2500年ほど前の紀元前463年、現在のインド国境に近いヒマラヤ山脈の麓のカピラ国のシャカ族の国王スッドーダナとその妃マーヤーの間に生まれました。マーヤー妃は出産のため里帰りの途中、ルンビニの花園でお釈迦さまをお生みになりました。花咲き乱れる中で誕生したので、「花まつり」と称してお祝いされます。

 シャカ族では、王子となる男の子が生まれたので、国を挙げての祝福に包まれました。父である国王は、賢そうな王子を見て、国一番の占い師アシダ仙人に将来を占ってもらいます。すると「将来は全世界を支配する王となるか、無上の悟りを開かれる仏陀となられるでしょう」と告げられました。そして「シッダールタ」と名付けました。「目的を達成する者」という意味があります。因みに姓は「ゴータマ」です。「ゴータマ・シッダールタ」がお釈迦さまの幼名です。

 しかし現在ではお釈迦さまの幼名は、あまり馴染みがないかもしれません。無上の悟りを開かれてからは、シャカ族のお生まれなので「お釈迦さま」と親しみを込めて呼んでいます。正しくは「釈迦牟尼仏」と言います。「牟尼」とは「聖なる人」という意味です。または悟った人ということで「仏陀」ともお呼びします。私たち僧侶は、降誕会などの法要の時には、最尊最上の人類の師と仰いで「大恩教主本師釈迦牟尼仏」とお唱えします。

 文筆家の平川克美はこう言いました。「人生の中で 誰もが一度だけ詩人になると 聞いたことがあった 生まれてくる子どもの名前を考えるときである」。生まれくる者は誰でもその将来が明るく豊かで幸多かれと願われているはずです。その願いを言葉として詩のように凝縮して贈られるのが名前であるというのでしょう。

 お釈迦さまは、いただいた幼名の如く目的を達成されました。まさに悟りを開き人々を導かれました。お釈迦さまの言葉を詩のように綴られた『発句経』に次の一節があります。「ささやかなる 楽しみを棄てて 若し 大きなるたのしみを得んとせば かしこき人は 彼岸(さとり)の大楽をのぞみて 小さきたのしみを すてさるべし」。お釈迦さまがシャカ族の王子という地位を捨て求めた誠の幸せとは、地位や名誉やお金という「小さきたのしみ」ではなく、全世界の人の心の安らぎという「大楽」なのです。

 それでは又、4月11日よりお耳にかかりましょう。

 

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