テレホン法話
~3分間心のティータイム~
【第969話】「片雲無し」 2014(平成26)年11月21日-30日
住職が語る法話を聴くことができます
お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第969話です。
「晴れた日の景色はパンフレットに載っていますから、いつでも観ることができます。雨の日の景色は雨の日しか見ることができません。だから貴重なのです」と慰めるように、バスガイドさんは語りかけました。10月28日から2泊3日のお寺の団体参拝旅行初日、バスが走り出すと、小雨がぱらつき出したのでした。
しかし、行程が進むにつれて日が射してきました。目的地の一つである世界遺産白川郷では青空の下、合掌造りの家々を仰ぎ見ることができました。全国でも珍しい茅葺合掌の本堂・庫裡・山門が調った浄土真宗の明善寺のお参りも叶いました。今から約260年前の延享年間に創立された寺です。白川村の春は屋根の葺き替えと共にやってくると言われます。4-50年に一度葺き替えられてきました。作業は村民総出の「結」による100-200人で1日で葺き替えられます。そういった機会に技術を習得して、伝統が引き継がれてきたのです。
また、合掌造りは、釘、カスガイ等を一切使わず、クサビの他はわら縄等で締めくくった特殊は工法でできています。大広間では、囲炉裏火の火種を絶やさないため一日中燃やされています。建物全体がいぶされて柱なども漆塗りのような光沢を放ち、住居の耐久性が高まるといいます。合掌造りといういにしえの人々の智恵と技術に感服すると同時に、それを受け継ぎ伝えている人々の心意気に、正に手を合わせずにはいられませんでした。
連日「青空」という何よりのおもてなしに迎えらましたが、圧巻は上高地です。大正池を過ぎ、カラマツの並木を抜けると、梓川(あずさがわ)に懸る有名な河童橋が現れます。そこから望む岳沢(だけさわ)や3千メートルを超える奥穂高の山々は息をのむばかりです。撮ってきた写真を見ても、青空だけを張り付けたかのように、嘘のような青い空が広がっています。仏像には光背がありますが、高い山の光背なら、青空に適うものはないでしょう。
上高地は昭和27年に、日本で初めて特別名勝および特別天然記念物に同時指定されました。野生動物に餌を与えたり、野鳥・昆虫・魚などを捕まえることは禁じられています。草花を採ったり、樹木を傷つけることは勿論、ゴミ捨てもいけません。自家用車の乗り入れも規制されています。カラマツの並木道を清掃していましたが、それを見て外国の観光客は驚いていました。自然の美しさを自然のままに保ち続けるのは、現代においては至難なことです。何事も良いものをそのまま伝えていくためには、その陰でどれほどの名もない人々の働きがあることでしょう。
今回の旅行で雲一つない青空は、我々に対して、人間の身勝手な煩悩を取り除き、自然と一つになりなさいと教えているかのようでした。「万里片雲無(ばんりへんうんなし)」という禅語があります。どこまでも晴れ渡った大空で一片の雲も見られないということです。煩悩もなく澄み切った悟りの境地を表していますが、人間は自然の足元にも及びません。家に着けば、日常の煩わしさが待っていて、苦も無く煩悩という雲が湧いてきます。
それでは又、12月1日よりお耳にかかりましょう。
最近の法話
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