テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第796話】「野球と呼吸」 2010(平成22)年2月1日-10日

ikebananannten.JPGのサムネール画像 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第796話です。
 プロ野球では、今シーズンからカウントのコールを従来のストライク、ボールの順番を逆にして、ボールカウントを先にコールすることを決めました。つまり、ワンストライク、ツーボールと言っていたのが、ツーボール、ワンストライクとなるわけです。大リーグはじめ国際大会ではボールカウントを先にするのが基準なので、国際大会が増えてきている現状を踏まえての変更のようです。馴染むまでは、少し違和感があるかもしれません。
 さて、私たちは馴染むと馴染まないとにかかわらず、四六時中無意識に呼吸をしています。でも、深呼吸をして下さいと言われると、その仕方を意識します。どうするでしょうか。たいていの方は、大きく息を吸ってから、吐き出すのではないでしょうか。しかし、「呼吸」という字の成り立ちでわかるように、吸うのは後です。呼吸の「呼」は「呼ぶ」という字ですが、息を吐くという意味があります。息を吸いながら名前は呼びにくいものです。声を出すとき、誰でも息を吐きます。「呼吸」は吐いてから吸うというわけです。
 曹洞宗の教えの根本は坐禅です。坐禅で大事なのは、呼吸です。普段より一呼吸一呼吸を出来るだけ長めにします。先ず、大きく息を吐いて、吐いた勢いで息を吸い込みます。吐き出さなければ、何も入ってきません。この時吐き出すのは、息ばかりではなく、生きているがゆえに生じる様々な悩みやわだかまりなど、一切のこだわりもです。
 「腹に一物、肩には荷物」私たちは、吐き出すことをしないで、吸いこむことばかりに囚われて、知らず知らずのうちに、余計な「お荷物」を抱え込んでいます。坐禅はそんな一切の執着を捨て、今の一息に成り切る修行です。ですから、吐き出すことは大事です。ゆっくり呼吸を整え、身を整えていると、我を忘れ、ただ坐禅に集中できている姿があるだけです。その結果、吐くのが先とか、吸うのが後などという意識もなくなります。呼吸を意識しない呼吸ができれば本物です。
 今シーズンのプロ野球でも、ボールが先とか、ストライクが後などということに囚われていると、本来のバッティングができなくなるかもしれません。その為に、「腹がすわり、肩の力が抜ける」までの練習が求められる訳です。そしてピッチャーの投げ方に合わせて、「ただ投げられた球を打つ」の気合でバッターボックスに立てば、結果はついてくることでしょう。野球呼吸と言えます。
それでは又、2月11日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【1322話】
「醍醐味は元気でゆっくり」
2024(令和6)年9月11日~20日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1322話です。 牛乳の精製過程の5つの味のうち、最後に出てくる最上の味を醍醐味と言います。仏教ではそれを最高の境地の涅槃にたとえます。そして醍醐の原語は「サルピル・マンダ」で、あのカルピスの名称の元であると言われます。そのカルピスが好物で、116歳の今も元気で世界最高齢に認定されたのは、兵庫県の糸岡富子さんです。 カルピスと長... [続きを読む]

【1321話】
「0歩目の奇跡」
2024(令和6)年9月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1321話です。 1996年8月21日(水)甲子園の決勝戦は、松山商と熊本工。3対3の同点で10回裏熊本工の攻撃、1死満塁で3番本多選手。松山商は絶体絶命のピンチ。監督は守備交替で矢野選手をライトに起用。その直後、本多選手の打球は高々とライトへ、3塁ランナーは俊足の星子選手。実況中継も「行った、... [続きを読む]

【1320話】
「必死すなわち」
2024(令和6)年8月21日~31日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1320話です。 パリ・オリンピックの新競技「ブレイキン」は、1970年代アメリカニューヨークの貧困地区の路上が発祥。縄張り争いに疲れたギャングのボスが「音楽と踊りで勝負しよう」と呼びかけたのが始まりとか。オリンピックにふさわしいです。 オリンピックは元を糺(ただ)せば、戦争の代わりに様々な争... [続きを読む]