テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第912話】「慈悲というランドセル」 2013(平成25)年4月21日-30日

住職が語る法話を聴くことができます

912.JPG お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第912話です。
 4月・入学式・ピカピカの1年生と言えば、先ず小学1年生を思い浮かべます。その「ピカピカ」の象徴は、やはりランドセルでしょうか。あるランドセル会社が「未来へつなぐタイムレター」という事業を行っています。1年生のランドセルを買っていただいた方の、わが子への手紙を募集し、会社でそれを保管し1000日後に、その子ども宛に郵送するというものです。1年生になったばかりの子どもを思って書いた手紙が、その子が3年生になった時に、届けられるわけです。
 隣町の亘理町の小野由美子さんは、夫と3人の子どもを残し、一昨年の東日本大震災の津波で、犠牲になりました。悲しみに暮れていた小野家にその年の夏、亡くなったはずの由美子さんから、子ども宛の手紙が届きました。由美子さんは次女望美さんの入学時に、家族に内緒でタイムレターに応募していたのです。震災の年、望美さんは3年生になっていました。震災後、学校を休んだり、授業中に泣いたりしていましたが、突然お母さんの直筆の手紙を見てびっくりしました。その手紙には、「げんきに学校にいってくれるだけで、おかあさんはとてもあんしんしていました」と平仮名で書かれていたのです。
 更に由美子さんは、他の子どもたちにも一緒に手紙を書いていました。長女には「口ごたえをしながらもいっぱい手伝ってくれて、お母さんは・とても・、とても・、とても感謝していました」と書いています。長男には「妹達にやさしいお兄ちゃんになっているように」と願いが込められていました。3年前に書かれた手紙なのに、震災後の今の今をすでに見据えているかのような内容です。母親の子を思う心、見つめるまなざしは、想定外の大津波にも流されることなく、1000日という時間を越えて、一層輝きを放っています。
 さて、私たちが今1000日後のことを思う時、誰にどのような手紙を書くことができるでしょうか。親から子へ、子から親へ、あるいは自分から自分へというのもあるでしょう。10年先ではちょっと想像がつきにくくても、1000日後であれば何となく、思い描くことはできるのではないでしょうか。
 私は仏さまに宛てて、短い手紙を書きましょう。「仏さま、あなたは私たちに慈悲というランドセルを背負わせて下さいましたね。慈悲の慈とは、楽を与えること、悲は苦しみを除くこと、与楽抜苦の教えですね。被災地の誰もが辛く苦しい想いを抱いていますが、みんなで慈悲を心がけ、今日まで来ました。ランドセルに入っているささやかな笑顔を分けて、誰かが流した涙の粒を拾ってランドセルに入れてきました。おかげさまでみんなピカピカの顔になりました。ありがとうございます」。
 それでは又、5月1日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【第1142話】
「お斎」
2019(令和元)年9月11日~20日

news image

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1142話です。 「お斎(とき)」とは、寺院やご法事で出す食事のことを言います。僧侶の食事は元々一日一食で、午前中にとることになっていて、時刻に関わるものであることから、食事を「とき」と呼ぶようになりました。「斎」という字は、精進潔斎の「斎」と書き、汚れを清め行為を慎むという意味があります。そのこともあり、お斎には、肉・魚などを用... [続きを読む]

【第1141話】
「13匹の抜け殻」
2019(令和元)年9月1日~10日

news image

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1141話です。 今年の8月15日新潟県の糸魚川市で、31.3度を記録しました。これは最高気温ではなく最低気温です。最低気温の最も高い記録を29年ぶりに塗り替えたのです。要するに一日中気温が30度を下回らなかったということです。因みにこの日の最高気温は、同じ新潟県の寺泊で、40.6度でした。... [続きを読む]

【第1140話】
「ヒマワリの夏」
2019(令和元)年8月21日~31日

news image

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1140話です。 「スマイリング・シンデレラ」と世界中から称賛された女子ゴルフの渋野日向子(しぶのひなこ)さん。8月4日全英オープンで優勝し、日本勢42年ぶりの海外メジャー制覇を果たしました。20歳とは思えない勝負度胸と、普段は勿論ピンチの時も笑顔を絶やさないその姿勢が、共感を呼んでいます。... [続きを読む]