テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1200話】「島田さん」 2021(令和3)年4月21日~30日


 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1200話です。

 「新聞でお名前見てると看護士が95歳の心を癒やす」島田啓三郎。これは2月28日の河北新報の歌壇に載った歌です。島田さんは私のもう一つの住職地徳泉寺の檀家さんで、総代を勤めいただいたこともあります。しかし、去る2月25日に数え年97歳で旅立たれました。その3日後の新聞掲載だったのです。

 これが遺作となったかと思いきや、死後ほぼ1カ月後の3月21日に、今度は俳壇に「バス停のタンポポまたぐハイヒール」という句が選ばれていました。没後尚その作品に光が当たっています。一昨年12月入院のため投稿できない時期には、「島田さんの歌を待ってるずっと待ってるみんな待ってるあの歌待ってる」などという島田さんラブコールの投稿が相次ぎました。河北新報も、「90年の歴史がある河北歌壇・俳壇の中で最も愛された投稿者と言えるだろう」と称えています。

 島田さんは山元町の新浜地区で、いちご農家を営んでいました。海に近いその地区は東日本大震災の大津波で、1戸残らず流され、犠牲者も多数でした。あたりは災害危険区域になり、住民はそれぞれ新天地での生活を余儀なくされました。島田さんの家族は無事でしたが、家と畑を失い、避難所・仮設住宅を経て、現在の所に落ち着きました。しかし、5年前仮設住いの時に奥さんに先立たれ、昨年暮れには長男さんも亡くすという不幸を味わっています。

 被災当時すでに80半ばを超えていたでしょうが、ほとばしるように俳句と歌を投稿し、毎週その名前を見かけないときがないほどでした。一句一首が機知に富んで、その人柄がにじみ出る作風で、多くの人を引き付けました。「穢れなき水を集めて阿武隈は海の殺意を日毎鎮める」震災間もない頃の歌です。すべてを失った悔しさ悲しさを浄化して、恕(ゆる)すという仏の心が感じられます。

 また島田さんは達筆で、般若心経を写経した掛軸を徳泉寺に奉納されました。床の間に掲げていたのですが、大津波で建物諸共流されてしまいました。その後、「はがき一文字写経」で徳泉寺復興を目指すと知るや、はがき1枚に般若心経262文字を細かい字で写経し、復興を祈るという文字を添えて送って下さいました。流されても立ち上がるその文字に圧倒されました。

 島田さんは17文字や31文字そして262文字で、自らを奮い立たせて大震災に向き合ってきました。そのしなやかな無常の受け止めかたが、どれほど多く人を励ましてきたことか。たまたま今回のテレホン法話は1200話という節目でしたが、島田さんの尊い足跡の一端を紹介できて、継続してきた甲斐がありました。今後は島田さんにあやかって、みなさんに待っていると言われるようなテレホン法話を心がけようと、想いを新たにしました。「島田さん身は隠れても匂い立つ残せし歌に仏のかほり」合掌

 それでは又、5月1日よりお耳にかかりましょう。

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