テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1148話】「空しく施す」 2019(令和元)年11月11日~20日

 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1148話です。

 オウンゴールとは、サッカーで誤って、自分のチームのゴールにボールを入れて、相手の点数になることで、昔は自殺点とも言いました。

 この度の萩生田光一文部科学大臣の「身の丈」発言は、まさにオウンゴールです。来年度からの大学入試共通テストでの英語民間試験の活用導入を見送ることになったからです。それは民間に丸投げして、英語の「読む・聞く・話す・書く」の4技能を評価しようとするものでした。そのため、入試の公正・公平さが保たれないと、疑問視されていました。加えて、受験生の経済的な状況や、居住地域によって格差を生み出す要素があって、教育現場からは、見直しの声が挙がっていました。

 しかし文科省は、制度ありきで強引に推し進めようとしてきました。そこに「自分の身の丈に合わせて、頑張ってもらえば」という大臣発言です。この制度に身の丈があっていない人は、最初から諦めろというのでしょうか。裕福で都市部に住む受験生に有利なことを大臣自ら認め、教育格差をこれから広げていくぞと宣言したようなものです。教育の機会均等を常に念頭に置かなけれならない文科省にとっては、自殺に等しい発言です。まさにオウンゴールです。ただこれだけでは、まだ受験生に点数が入ったことにはなりません。今後は政治家や官僚の都合優先ではなく、ほんとうに受験生の身になった制度改革が進められるよう願うばかりです。

 一方、東京五輪のマラソンでも問題勃発です。そもそも見せかけだけの「復興五輪」という謳い文句で、真夏に東京で開催するというのは、最初から自殺行為と言ってもいいでしょう。国際オリンピック委員会は、巨額の放映権料を払うアメリカのテレビ局に配慮し、欧米のスポーツシーズンと重ならない開催時期にしたいのです。東京は何としてもオリンピックを誘致したいがために、様々な無理を承知で「おもてなし」を約束しました。確かに暑さ対策など、その準備を着々進めてきたことでしょう。

 しかし、今年9月にカタールのドーハであった陸上の世界選手権で、暑さ対策のためマラソンと競歩を夜中に行いましたが、棄権者が続出しました。そこで東京五輪のマラソンと競歩の開催地を札幌に変更されました。「選手の健康が常にもっとも重要」との声明を出されても、開催地は勿論、選手や関係者は戸惑うばかりです。開催まで9カ月しかないこの時期に、どれだけ国民を翻弄すればいいのでしょうか。最初から分かっていたことです。東京の真夏の暑さが半端でないことも、オリンピックが復興に直接結びつくことなどほとんどないことも。ゴリ押しとも言える五輪押しは、あまりにも勝手すぎます。

 英語民間試験も東京五輪もスタートから無理がありました。自然を甘く見てはいけません。身の丈に合った自然環境で人は動くべきです。禅語に曰く「発心正しからざれば、萬行空しく施す」。最初に何のためにやるかという心の向き気がしっかりしていないと、あらゆることが無駄になるのです。

 ここでお知らせいたします。10月のカンボジアエコー募金は、166回×3円で498円でした。ありがとうございました。それでは又、11月21日よりお耳にかかりましょう。

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