テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1264話】「遺言」 2023(令和5)年2月1日~10日


 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1264話です。

 インドに三かく長者というお話があります。恥かく・義理かく・欲かくの三かくに励んで、一代で富を築いたのです。やがて年老いた長者は、どんなにお金を貯めても、あの世には一文も持っていけないことを悟ります。そして息子に告げます。「わしが死んだら、お棺の両側に穴をあけて、空っぽの両手を出した姿をみんなに見せてくれ。死ぬときは何も持っていけないと言いたいのだ」。葬儀の時息子がその通りにすると、お棺から両手を出した長者を見た人々は、「やっぱり三かく長者だね。死んでもまだ、何か欲しいと手を出しているよ」

 三かく長者でなくても、誰でも死んでしまえば、すべての財産はこの世に置いていくしかありません。たいていは遺産相続をするでしょうが、相続人がいなければ、国庫に入り国の財産となります。本人が死亡し遺言もないとします。利害関係者の申し立てで、家庭裁判所が相続財産管理人を選任します。未払金などを清算し、相続人が本当にいないかを確認します。一緒に暮らしたり、身の回りの世話をしたりした「特別縁故者」がいれば、審判の上で分与されます。その他諸経費を差し引いて、残りは国庫に入ることになります。

 この相続人なき遺産が、2021年度は647億円で過去最高でした。10年前の2011年は332億円でしたので、倍近く増えています。その要因としては.単身高齢者の増加や未婚率の上昇が挙げられます。全くの「おひとり様」で相続人がいなくても、有効な遺言があれば希望する相手に、遺産を譲ることができます。判断能力がしっかりしているうちに、遺言書を作っておくのがよさそうです。

 さて、ある檀家さんの話です。73歳の男性は、町内でひとり暮らしでした。昨年11月に病院で亡くなりました。葬儀の依頼に来たのは、生前後見人の契約をしていた司法書士の方でした。生前と言っても契約したのは、亡くなった日の午前中でした。契約の数時間後に男性は目を落としたのです。後見人ひとりだけの参列でしたが、無事葬儀・納骨を済ませました。

 しかしその後、独り身と思っていた男性には離婚歴があり、子どもがひとりいることが判明しました。音信不通の状態でしたが、何とか手を尽くして探し当てることができました。男性はいくばくかの財産を残していました。葬儀その他の必要経費を除いて、相続権はその子どもにあり、きちんと譲渡できたということでした。年末にその子どもと後見人が訪れ、お墓にお参りをしていかれました。劇的な後見人契約を結んだ男性の生涯の潔さを見る思いでした。

 三かく長者でさえ、最期はきれいにまとめようとしました。しかし生前の印象があまりにも悪くて、丸く収まらなかったのは残念でした。「人は生きたように死んでいく」ジャーナリスト島﨑今日子の言葉です。良い遺言が残せますように・・・。

 それでは又、2月11日よりお耳にかかりましょう。

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