テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第951話】「ここからの一歩」 2014(平成26)年5月21日-31日

住職が語る法話を聴くことができます

951N.jpg  お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第951話です。
 5月18日は中浜新墓地竣工式でした。東日本大震災から数えて1165日目。見事な青空が広がっていました。私はこういう風に挨拶を始めました。「1165日前のあの東日本大震災の惨状を見たとき、青空などもう見ることができないのではないかという絶望感がありました。同時に、否、いつか必ず青空を見ることができるようにしなければと覚悟しました。今日こうして多くのみなさまのおかげで、青空の下、新しい墓地に集うことができ、感謝申し上げます」 
 徳本寺の墓地の中で、沿岸部にあった中浜墓地は、大津波により壊滅状態になったのです。墓石が倒されただけでなく、流されて見つからないものもありました。骨堂は抉られて、お骨は見当たらず、砂が溜まっているばかり。流された松の木や乗用車・U字溝までが墓石の上に載っていました。お墓の周りは地盤沈下が進んでいます。誰もがここでお墓の再建はあり得ないと思うほどの光景が広がっていました。
 その墓地の使用者は、ほとんどが中浜地区の檀家さんです。町内でも最も多くの犠牲者があり、家屋も流され、現在は災害危険区域になっています。自分たちの住まいに加えて、ご先祖さまの住まいもなくなってしまったという状況です。それでも多くの方が、自分たちの住まいよりも、ご先祖さまの住まいを早く整えたいという思いを抱いていました。
 こうして墓地は内陸部にある徳本寺境内地の中に移転することになりました。境内地といってもこんもりとした林のようなところです。大がかりな造成工事を施さなければなりません。駐車場用地のために隣接地を取得する必要があります。普通でさえ簡単でない墓地移転を、大震災という異常事態の中で行うことは想像を絶するものがありました。
 生きていく上で、衣食住が足りていることは大事です。しかし、人はそれだけで十分な生き方はできません。心の拠りどころも大事です。その一つがお墓なのです。ご先祖さまのおかげがあって、今の私たちが存在しているわけです。お墓がないということは、そのつながりが絶たれたような気持になり、心はさまようばかりです。衣食住の復興と併せて、心をつなぎとめる精神的な復興も目指さなければなりません。そんな思いでこの3年間、多くの方と中浜墓地の復興に尽力して「中浜新墓地」として甦ることができました。
 私は挨拶の結びに言いました。「『失敗したところでやめるから失敗になる 成功するまでやれば それは成功になる』という松下幸之助の言葉があります。私たちも、被災したままでいたら、被災地と呼ばれるだけです。復興するまで精進すれば、故郷は必ず甦ると信じて、ここから新しい一歩を踏み出しましょう」
 ここでお知らせ致します。東日本大震災を語り継ぐテレホン法話集の第2集が出版されました。『一歩先へ 二歩先へ―3.11その先へ―』定価1000円。ご希望の方は徳本寺までご連絡ください。電話0223-38-0320です。
 それでは又、6月1日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【第1206話】
「父の呟き」
2021(令和3)年6月21日~30日

news image

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1206話です。 6月20日の父の日を前にした6月14日に、作曲家で俳優の小林亜星さんが5月30日に88歳で亡くなったと報じられました。万人に愛されたCMソングなどを手がけた実績は高く評価されています。更にはテレビドラマ「寺内貫太郎一家」での、頑固一徹な父親役で強烈な印象を残しました。 あれから50年近く経って、もはや「頑固おや... [続きを読む]

【第1205話】
「フェイスブックの朝」
2021(令和3)年6月11日~20日

news image

住職が語る法話を聴くことができます --> お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1205話です。 福島市長楽寺住職の中野重孝さんは、毎朝決まって5時に、フェイスブックから挨拶を発信していました。現在の気候状況から始まり、季節の花の写真なども添えて、さわやかな一日の始まりにふさわしいものでした。そして「今日も1日よろしくお願いいたします。世界の平和と皆さまの幸せを願い... [続きを読む]

【第1204話】
「躑躅(つつじ)
2021(令和3)年6月1日~10日

news image

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1204話です。 ツツジの花は美しいですが、その名前の漢字は難しいです。私はたまたま「躑躅森(つつじもり)」さんという住職さんに出会い、その字を知りました。今でも辞書がないと書けません。「躑躅」という漢字は「てきちょく」とも読み、「いっては止まり、いっては止まりして進まない」という意味があるそう... [続きを読む]