テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第904話】「急須」 2013(平成25)年2月1日-10日

住職が語る法話を聴くことができます

904.JPG お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第904話です。
 仏教とお茶はたいへん縁が深いです。奈良・平安時代に最澄や空海が唐よりお茶の種子を持ち帰ったのが、わが国のお茶の始まりとされています。そして、鎌倉時代、臨済宗の栄西禅師が宋より、お茶を持ち帰って、お茶の効用や製法を広め、一般的になったようです。仏前にお供えものをするときも、お茶は欠かせないものになっています。
 ところが、「最近の高校生は、日本茶の入れ方を知らない」という、ちょっと驚くべき報告が、先月の日教組の教研集会で発表されました。家庭科の料理実習で、お茶の葉と水を入れた急須を直接火にかけようとした男子生徒がいたそうです。急須でお茶を入れている家庭は21%で、たいていは親がお茶を入れているとみられ、日常的に急須を使う生徒は、5人に1人もいないだろうとのことでした。これはペットボトルのお茶を購入する家庭が、10%を超えているという事実からして、うなずける結果とも言えそうです。
 小さい時から、ペットボトルだけのお茶を飲んで育った人がいても不思議がないほど、世の中にはペットボトルが溢れています。その結果「お茶を作る」という言い方をして、家では作ったのを見たことがない。いつもペットボトルのお茶だった。急須でお茶を作れるとは知らなかったということになります。工場でペットボトルに入れるお茶は、作るものかもしれませんが、家庭では急須で「お茶を入れる」のが普通でしょう。ちょっと一休みしましょうというときは、「お茶が入りました」といいます。「ペットボトルを持ってきました」といわれても、あまりほっとする感じはしません。
 さて、毎年お正月の16日は、たくさんの檀家さんが寺に年始のあいさつにお出でになります。その一人ひとりにお茶を入れて差し上げます。確かに時間もかかるし、急須を取り換える手間もたいへんなものです。それでも、何人お出でになっても、この人のためにお茶を入れている、そんな思いでお出しします。檀家さんも両手で茶碗をいただき、粗茶ながらおいしそうに召し上がって下さいます。一期一会の世界がそこにあります。今この時が、一生に一度の出会いであり、かけがえのない一服であるということを、急須で入れたお茶は教えてくれます。
 ペットボトルの便利さは、今更言うまでもないことです。持ち運びしやすく、いつでもどこでも飲めます。温めることも冷やすこともできます。資源の再生も可能です。しかし、家庭にあっては、本格的な作法に則らずとも、お茶を入れるというひと手間を惜しみたくないものです。そのひと手間が家庭にゆとりと和みをもたらすかもしれません。何事も手軽さに走って、急須で入れた深みのあるお茶の味わいをわからないようでは、万事休すです。
 それでは又、2月11日よりお耳にかかりましょう。

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