テレホン法話
~3分間心のティータイム~
【第1042話】「希望という悟り」 2016(平成28)年12月1日-10日
住職が語る法話を聴くことができます
お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1042話です。
11月22日午前5時59分、福島県沖を震源とするマグニチュード7.4の地震がありました。仙台港では1.4メートルの津波が観測されました。驚いたことには、この地震は東日本大震災の余震とみられるというのです。5年8カ月経っても、まだ大震災の影響は残っているのです。
そうです、大震災はまだまだ終わらないばかりか、多くの人をどれだけ苦しめているかわかりません。福島第一原発事故で福島から横浜市に自主避難した中学1年の男子生徒が、いじめを受けて不登校になっていた事実が明らかになりました。「いままでなんかいも死のうとおもった。でも、しんさいでいっぱい死んだからつらいけどぼくはいきるときめた」男子生徒が小学6年の時に書いた手記です。ほとんど平仮名文字で鉛筆書きの文面が、不憫さを募らせます。
子どもの無邪気さと残酷さは背中合わせなのでしょうか。大震災の年の8月に転校してから、名前に「菌」を付けて呼ばれ、ばい菌扱いされて、複数の児童からいじめを受け始めました。支援物資の文房具をとられることもありました。小学5年の5月には、加害児童10人ほどと遊園地やゲームセンターに行くようになり、遊興費や食事代・交通費など1回5万〜10万円を10回近く負担してきて、総額で150万円に上るといいます。「ばいしょう金があるだろうと言われむかつくし、ていこうできなかったのもくやしい」とも書いています。
大震災と縁のない環境に育った子どもたちにとって、大震災で故郷を追われるという理不尽さを抱えた子どもを、思いやりの対象ではなく、いじめの対象としか見られなかったというのは、情けない限りです。それを見逃してきた地元の親も先生も、どんな生き方をしているのかと問いただしたくなります。賠償金の問題など、どこかで大人がそういう話題を出しているから、子どもも目ざとくいじめに利用することになるのでしょう。
多くのボランティアが被災者の身になって、力を尽くしてくれました。一方、大震災のためにいじめられなければならないというのは、二次災害にも等しいものです。救いは、大震災で犠牲になった人の分まで生きようとするかのように、「ぼくはいきるときめた」と言い切っていることです。
さて出家したお釈迦さまは6年間の苦行に納得できず、やせ衰えて山を下りたとき、スジャータという娘が乳粥を供養してくれました。それで元気を取り戻し坐禅三昧を貫き、暁の明星を見てお悟りを開かれたのは、この時期の12月8日です。それは、かたよったり、とらわれている心から解き放たれたことを意味します。どんな困難に出会っても、スジャータのように手を差し伸べてくれる人はいるはずです。それも生きていればこそです。いじめなどかたよりの最たるものです。そんなものにとらわれて、これからの人生を無にしないで下さい。男子生徒にとって希望という悟りが得られますようにと願うばかりです。
それでは又、12月11日よりお耳にかかりましょう。
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