テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第853話】「復興への合唱」 2011(平成23)年9月1日-10日

住職が語る法話を聴くことができます

20110901-3.jpg お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第853話です。
 4歳から88歳までの、年齢差を超え、男女の別も超え、住んでいる県も超え、被災している人もそうでない人も、140人がひとつの舞台に立ちました。先月21日に山形県最上町で行われた「今、最上から東北に音の風を吹かせて。」という東日本大震災復興・被災者支援コンサートでのことです。音楽の、歌の風が吹いたら、喜びも悲しみも、きっと人々は分かち合えるという思いを抱いて、会場は600人もの参加者で溢れました。
 東京・埼玉のこども合唱団とママさんコーラス、そして地元の『まけないタオル』最上町コーラス隊。この中には、この度の大震災で被災して最上町に避難されている子どもも大人も含まれています。最上町の松林寺住職の三部さんが発案した、あの「首にも頭にも巻けない、だけど大震災にも負けない」という「まけないタオル」の活動が、多くの人の共感を呼んでいます。私もテーマソングの作詞ということで共感した一人です。何といっても、作曲して歌っている奈良県の「歌う尼さん」こと教恩寺住職やなせななさんの歌声が、さらに多くの方の共感を呼んだようです。
 この「まけないタオル」の歌を合唱曲にして、みんなで歌うことによって、悲しみや困難に負けずに手を携えていこうと願ってのコンサートです。本番の合唱はほんとうに圧巻でした。老若男女それぞれの置かれている立場も境遇も違います。出せる声も音の高さも違います。しかし、それぞれのパートを生き生きとこなしながら、見事なハーモニーを響かせ、「まけないタオル」を歌い上げていました。それは「大震災」というとてつもない「負の遺産」を誰もが斉しく抱えているからこそ、それをバネとして、心をひとつにできたともいえるのかもしれません。
 勿論、ここに至るまでには、コンサートの企画者であるオペラ歌手の池田弦さんの情熱溢れる合唱指導があってのことです。更に忘れてならないことは、コンサートの運営には、70人からのスタッフが関わっていたということです。会場設営等、直接コンサートに関わる方、食事等のお世話をする方、人目に付かないところでも多くの方が、「大震災」に負けないエネルギーを発揮して、心をひとつにしてコンサートを成功に結びつけました。
 コンサートの最後のアンコールでは、再び「まけないタオル」です。今度は合唱隊の方ばかりではなく、会場の全員で歌いました。歌の3番の歌詞には、〜ほら拍手が 響く新しい舞台に〜とあります。心をひとつにした舞台に、数え切れない拍手が贈られました。――ひとつを悟りといい ふたつを迷いという――大震災から復興することに迷ってはいられません。
 それでは又、9月11日よりお耳にかかりましょう。
♪ほら 拍手が響く新しい舞台に 
 まけないぞ まけないぞ 大樹にまけない
 根っこのこころ 揺るぎはしないから
 まけないぞ まけないぞ 首にも頭にも まけないタオル 半端じゃないぞ

最近の法話

【1308話】
「花咲か爺さん」
2024(令和6)年4月21日~30日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1308話です。 枯れ木に花を咲かせたのは「花咲か爺さん」、被災地の荒地に花を咲かせたのは「NPO法人三島緑の会」です。静岡県三島市の団体で、東日本大震災後の2013年から日本沙漠緑化実践協会の植樹活動に参加し、毎年山元町に桜を植樹して下さっています。一昨年はコロナ禍のためお出でいただけませんでしたが、苗木を送って下さいました。縁... [続きを読む]

【1307話】
「揺らがず大遠忌」
2024(令和6)年4月11日~20日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1307話です。 たとえばですが、「正月の元旦に地震の避難訓練をします」と言われて、参加しますか?正月早々とんでもないと、誰でも思います。しかし無常なる自然は、正月とか人間の都合に忖度しません。能登半島では元旦にとんでもない地震が起きたのです。 実は能登半島は曹洞宗にとっては聖地です。曹洞宗に... [続きを読む]

【1306話】
「シッダールタ」
2024(令和6)年4月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1306話です。 「文殊丸」「行生」という2人の名前で、どなたかわかりますか。ヒントはどちらも曹洞宗に関わる方です。文殊丸は大本山永平寺を開かれた道元禅師、行生は大本山總持寺を開かれた瑩山禅師の幼名です。昔は幼い時に仮に名付ける名前や元服以前の名前を持つことがあったようです。 さて、4月8日は... [続きを読む]