テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第857話】「太陽のような情け」 2011(平成23)年10月11日-20日

住職が語る法話を聴くことができます

20111011.jpg お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第857話です。
 「情けは人のためならず」という諺を、「人に情けを掛けるとその人のためにならない」と解釈しがちですが、本来は違います。「人に情けを掛けると、巡り巡って自分のためになる」という意味です。2010年度の文化庁の国語世論調査によると、正しく解釈できた人は45.8%で、間違った人は45.7%といいますから、情けない話です。しかし、言葉に込められた心は全くその通りであると、海を越えた出来事で実感しました。
 先日、SVAシャンティ国際ボランティア会のカンボジア人スタッフであるトゥーンさんが、東日本大震災のお見舞いということで態々徳本寺にお出でになりました。お預かりしている多くの犠牲者のご遺骨に対して心から手を合わせて下さいました。というのも、30年前からSVAはカンボジア支援活動を行って来たからです。
 私もその活動にいささか関わっていますが、これまでSVAはカンボジアに数多くの学校を建設したり、絵本を贈ったりして、教育に多大な貢献をしております。そのことに対して、カンボジアの子どもから大人までが、感謝の気持ちをいつも抱いています。そしてこの度の大震災の惨状を知るや、日本からの支援で建設された学校はもとより、各地で日本への支援が広がったと言います。
 コンポントム州のボスウェイ小学校では、7人の僧侶が鎮魂のお経のお勤めする中、決して豊かではない子どもや村人が、募金をして下さいました。カンボジアの人たちは、これまで募金をいただくことはあっても、自らが募金をするということはなかったと言います。それが街頭でも募金をすると、ほんとうにたくさんの募金が集まったそうです。集計するのに4時間もかかったほど、一人ひとりは少額ながら数多くの人が募金をしてくれたのです。
 そしてトゥーンさんは、お金では買えないもっと素晴らしいものを届けて下さいました。カンボジアの子どもたちが、日本の子どもたちを励ましたいという思いで描いた絵です。カンボジアに伝わる物語の一場面やカンボジアのお家などが、画用紙にクレヨンや色鉛筆で描かれています。不思議なことに、たいていの絵には、太陽が描かれているのです。子ども心にも、どんな辛いことがあっても太陽のように元気でいてねというメッセージを込めているかのようです。
 カンボジアの人々の情け深さは、どんな国にもどんな人にも巡って来る太陽のようでもあります。それもこれも日本に対する感謝の気持ちを忘れていなかったからなのでしょう。やはり、人に掛けた情けは巡り巡って、やがて自分のところにやって来るということなのでしょう。
 ここでご報告致します。9月のカンボジア・エコー募金は、229回×3円で687円でした。みなさんの情けもきっとカンボジアに巡っていきます。ありがとうございました。
 それでは又、10月21日よりお耳にかかりましょう。

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