テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1271話】「慈明忌」 2023(令和5)年4月11日~20日

住職が語る法話を聴くことができます



 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1271話です。

 先日親族が集まり、母静枝の17回忌法要を営みました。思い起こせば、平成19年2月22日母は体調を崩し入院となりました。しかし私はカンボジアに向かわなければなりませんでした。曹洞宗東北管区教化センター統監として、センターの30周年記念事業でカンボジアに移動図書館車を贈呈するためです。カンボジアに着いた夜、母の容態が急変したとの知らせ。翌日何とか贈呈式を済ませて、急ぎ帰国しました。入院前日まで普通の生活をしていたので、まさかという思いでした。しかし、意識は戻ることなく、入院13日目の3月6日の朝に79歳の生涯を閉じました。

 母は私のカンボジア支援や、教化センターの活動に対しても、理解を示し支えてくれていました。そこで葬儀後に親族とも相談し、母に賜った香典をカンボジアの子どもたちのために活用することにしました。長年寺を守り、多くの方に親しまれ、また誰にでも慈しみを注いできた母の香典返しにふさわしいと考えたからです。そして翌年12月に、シャンティ国際ボランティア会のお世話で、カンボジアのドップ・トノット村に小学校1棟を建設寄贈できました。学校名は母の名を冠した「ドップ・トノット・シズエ小学校」です。

 17回忌に当たり、カンボジアから現在の小学校の様子の報告が届きました。竣工以来15年間で約350人の子どもが巣立ち、今年度は188人が学んでいます。大学へ進学した子どもも2,3人いるということです。シズエ小学校ができるまでは、村に小学校はなく、子どもたちは川を泳いで森を越え、隣り村の学校に行っていました。村に小学校があるということは、子どもたちの未来がすぐそこに見えるということです。

 母は生涯において、子どもを育て、それぞれの孫を抱くことはできました。しかし、ひ孫に会うことは叶いませんでした。それがこの度の法要には、10人のひ孫が名を連ねたのです。17回忌という歳月はそういうことなのだと改めて感じました。シズエとは静かな枝と書きます。まさに静枝の縁を受けた子や孫、ひ孫の枝葉が繁茂して、たいへん賑やかな法要でした。

 また15年前シズエ小学校の贈呈式に訪れた際に、静枝の名前と戒名に因んで「静かなる枝に 佳き花の 香るらん」と書いた木製の記念碑を校庭に作っていただきました。この間まさに静枝という枝から、たくさんの子どもたちが巣立って行ったわけです。

 ひ孫もカンボジアの子どもたちにも巡り合うことはできなかった母ではありますが、その慈しみ溢れる縁は、確実につながり広がっていることを報告出来た17回忌でした。そういえば17回忌は慈明忌とも言います。慈しみを明らかにすると書きます。母の慈しみは色褪せることなく、年々深まっていくような気がします。

 ここでお知らせいたします。3月のカンボジアエコー募金は、802回×3円で2,406円でした。ありがとうございました。それでは又、4月21日よりお耳にかかりましょう。



ドップ・トノット・シズエ小学校

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