テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1190話】「駅伝が伝えるもの」 2021(令和3)年1月11日~20日


 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1190話です。

 100メートルを10秒で走れたら一流のランナーです。18秒なら鈍足と言われかねません。しかし、100メートル18秒のペースを20キロ以上も保てたら一流です。箱根駅伝の選手並みです。彼らは1キロ3分前後のペースで走り続けます。時速約20キロで、我々が自転車でやっと追いつけるくらいです。

 第97回箱根駅伝は、最終10区23キロの残り2キロというところで、駒澤大が創価大を逆転して、劇的な優勝を飾りました。駒澤大はそれまで一度もトップに立つことなく、10区で襷を受けた時は2位で、創価大とは3分19秒差がありました。戦後、最終区で3分以上の差を逆転したは例はなく、絶望的と誰もが思いました。

 3分以上の差は、距離にすれば1キロ以上もあるので、前を走る選手の影も姿も見えません。駒澤大の選手も監督も、優勝という意識は正直薄らいでいたでしょう。ただ残された最後の区間を誰よりも早く走るんだ、いわゆる区間賞を目指すんだ、ということでひたすら前を向いていました。

 一方、創価大の選手や監督は、1キロ3分の普段のペースで走れば、逆転されることなく余裕で初優勝できると安心していたことでしょう。レースを中継するアナウンサーや解説の方も、そのような論調で放送していました。ところが駒澤大の意気込みが、勝っていました。5キロを過ぎたあたりで30秒差を縮め、10キロ過ぎでは1分以上詰めて、その差は2分ほどになりました。

 こうなると追う選手に力が湧いてきます。逆に追われる選手は、いままでの安心が不安に変わります。初優勝というプレッシャーも加わり、いつもの体の動きができません。15キロ過ぎから、明らかに創価大の選手の足が鈍ってきました。駒澤大の選手の視界には、その姿が入ってきたことでしょう。いつもの体の動き以上の力が出て、みるみる差は縮まりました。そして、残り2キロというところで追いつき、一気に抜き去ってゴールしました。

 創価大の監督は、レース前にいみじくも言っていました。「タイムが走るんじゃない。人が走るんだ」。創価大の選手たちの1万メートルの持ちタイムは、ずば抜けて良くはなかったのです。しかし、レースになれば走るのはその人なんだから、決して見劣りすることなく、自分の力を発揮しなさいという励ましだったのでしょう。

 まさに「走るのは人」です。その置かれた状況によって、人の心は揺れます。委縮することもあれば、飛躍することもあります。足で走りますが、そのエンジンとなるのは前向きな心でしょう。常にベストを尽くせるようにと、弛まぬ練習をすれば、不安や心配は少なくなります。心配停止になるほどの練習が、諦めない強い心の源です。

 ここでお知らせいたします。12月のカンボジアエコー募金は、133回×3円で399円でした。ありがとうございました。
 それでは又、1月21日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【1308話】
「花咲か爺さん」
2024(令和6)年4月21日~30日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1308話です。 枯れ木に花を咲かせたのは「花咲か爺さん」、被災地の荒地に花を咲かせたのは「NPO法人三島緑の会」です。静岡県三島市の団体で、東日本大震災後の2013年から日本沙漠緑化実践協会の植樹活動に参加し、毎年山元町に桜を植樹して下さっています。一昨年はコロナ禍のためお出でいただけませんでしたが、苗木を送って下さいました。縁... [続きを読む]

【1307話】
「揺らがず大遠忌」
2024(令和6)年4月11日~20日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1307話です。 たとえばですが、「正月の元旦に地震の避難訓練をします」と言われて、参加しますか?正月早々とんでもないと、誰でも思います。しかし無常なる自然は、正月とか人間の都合に忖度しません。能登半島では元旦にとんでもない地震が起きたのです。 実は能登半島は曹洞宗にとっては聖地です。曹洞宗に... [続きを読む]

【1306話】
「シッダールタ」
2024(令和6)年4月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1306話です。 「文殊丸」「行生」という2人の名前で、どなたかわかりますか。ヒントはどちらも曹洞宗に関わる方です。文殊丸は大本山永平寺を開かれた道元禅師、行生は大本山總持寺を開かれた瑩山禅師の幼名です。昔は幼い時に仮に名付ける名前や元服以前の名前を持つことがあったようです。 さて、4月8日は... [続きを読む]