テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1134話】「虹梁」 2019(令和元)年6月21日-30日

住職が語る法話を聴くことができます



  

 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1134話です。

 「犬走り」や「鴨居」「蝶つがい」など、生き物の名前を入れて、建物を造っている日本建築にゆかしさを感じます。更に、寺院建築には、虹の梁と書いて「虹梁」と呼ばれる部分があります。柱と柱の間に渡される梁の一種で、緩やかに湾曲した形になっています。まるで、虹が架かっているかのようです。確かに、虹梁はただ弓のように反っているというだけでなく、何がしかの彫刻や彩色が施してあり、見栄えのするものです。

 梁ですから、建築の構造上、屋根などの重さを支えるものでなければなりません。加えて、本堂建築などでみられる梁は、寺という空間を荘厳する重要な部分でもあるのでしょう。それが虹梁というふうに進化してきたのかもしれません。特に、高低差のある柱間に渡される梁は、海老のように湾曲しているので、海老虹梁と呼ばれます。まさに宮大工の腕の見せ所でしょう。

 さて、東日本大震災で流された徳泉寺本堂も、多くのみなさまのご支援のおかげで、先月上棟式まで漕ぎつけることができました。本堂そのものは、5間四方ですので、そんなに大きなものではありません。しかし、総青森ヒバ造りで、そこそこに本堂の体裁は保っています。本堂中央の大間というところは、4本の虹梁で囲まれています。

 その虹梁を仰いで思い起こしました。大震災の後、何もかもなくなった徳泉寺の跡地に立った時のことです。即座に「もはや本堂を建てることはできないだろう。青空寺院という生き方を模索すべきかもしれない」と覚悟しました。事実、ほんとうに見事な青空が広がっていたのですから。でも、すぐ思い直しました。まだこんな青空が見られるなら、青空が似合う本堂を建てるという夢を持ち続けてもいいのではないかと。

 勿論、夢と言っただけでは、ほんとうに夢で終わってしまいます。秘かに目標に格上げしました。何年かかろうが、どんな形であろと本堂は建てよう。そうしたら、計画が湧き上がってきました。「はがき一文字写経」による復興です。それでも、虹梁のある本格的本堂までは思い至らず、虹梁は夢の世界でした。

それが今、虹梁の下に立ち、ある言葉をかみしめています。「雨が降らなければ 虹は架からない」。この復興まで、どれほどの雨が降ったことか、いやその前に、あれだけの大震災があったということが始まりです。それでも、目標を掲げて、止まない雨はないと信じていれば、虹は架かるということを、文字通り虹梁が教えてくれました。

 ここでお知らせいたします。徳泉寺復興の仕上げとして復興誌『青空があるじゃないか』制作のためのクラウドファンディングを展開中です。「レディーフォー徳泉寺」で検索してみて下さい。
【詳細はコチラ】

 それでは又、7月1日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【1308話】
「花咲か爺さん」
2024(令和6)年4月21日~30日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1308話です。 枯れ木に花を咲かせたのは「花咲か爺さん」、被災地の荒地に花を咲かせたのは「NPO法人三島緑の会」です。静岡県三島市の団体で、東日本大震災後の2013年から日本沙漠緑化実践協会の植樹活動に参加し、毎年山元町に桜を植樹して下さっています。一昨年はコロナ禍のためお出でいただけませんでしたが、苗木を送って下さいました。縁... [続きを読む]

【1307話】
「揺らがず大遠忌」
2024(令和6)年4月11日~20日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1307話です。 たとえばですが、「正月の元旦に地震の避難訓練をします」と言われて、参加しますか?正月早々とんでもないと、誰でも思います。しかし無常なる自然は、正月とか人間の都合に忖度しません。能登半島では元旦にとんでもない地震が起きたのです。 実は能登半島は曹洞宗にとっては聖地です。曹洞宗に... [続きを読む]

【1306話】
「シッダールタ」
2024(令和6)年4月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1306話です。 「文殊丸」「行生」という2人の名前で、どなたかわかりますか。ヒントはどちらも曹洞宗に関わる方です。文殊丸は大本山永平寺を開かれた道元禅師、行生は大本山總持寺を開かれた瑩山禅師の幼名です。昔は幼い時に仮に名付ける名前や元服以前の名前を持つことがあったようです。 さて、4月8日は... [続きを読む]