テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1083話】「フェアプレイ」 2018(平成30)年1月21日-31日

住職が語る法話を聴くことができます

 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1083話です。
 「フェアプレイ精神で正々堂々と闘うことを誓います」スポーツの選手宣誓の常套句です。1点でも多くとった方が、1秒でも早く着いた方が勝ちとなる競技が大半です。結果は厳正であり、それ以上でもそれ以下でもありません。ですから、そこに至る過程に不正があってはならないのです。あくまで公平で同じ条件で闘わなければならないのです。
 昨年9月に行われたカヌー・スプリントの日本選手権で、鈴木康大(やすひろ)選手は、ライバルの小松正治(せいじ)選手の飲み物に禁止薬物を入れました。レース後のドーピング検査で、小松選手は陽性反応が出たため、失格となりました。しかし小松選手は薬物摂取を否定し、鈴木選手が名乗り出たために、無実が判明しました。
 2人とも2020年東京オリンピックでカヌーの代表入りを目指すトップ級選手です。ライバルがドーピング検査で引っかかれば長期の出場禁止になり、自分がオリンピックに出る可能性が高まると目論んだのでしょう。他人を陥れて自分がのし上がるというのは、よくある話です。
 しかし、スポーツの世界では、誰もがフェアプレイ精神を持っているはずだという性善説を疑いません。競技の実力だけがすべてで、1秒でも遅ければ潔く自分の負けを認めるのがフェアプレイです。よもや選手仲間が競技以外のことで挑んでくるとは、想像だにしなかったことでしょう。
 小松選手が陽性反応が出た時のショックは、相当なものだったはずです。そして真っ先に相談した相手は、あろうことか鈴木選手でした。それは先輩として長年慕っていたからです。それなのに、鈴木選手は若手の小松選手の実力に脅威を覚え、禁止薬物以外にも用具やパスポートを隠したり、職場へ中傷メールを送付するなどの嫌がらせを繰り返していました。何としてもオリンピックに出なければならないと追い込まれていたようです。
 オリンピックはスポーツ界の頂点と言ってもいいでしょう。鈴木選手は「自分も小さな時からオリンピックに出たいと夢見ていたのに、こんな卑劣な手段で人の夢を諦めさせてはいけない」という良心の呵責(かしゃく)にさいなまれて、真相を告白したのです。フェアプレイの精神がかろうじて残っていたというべきでしょうか。
 西郷隆盛の言葉に「誠は天の道なり。これを誠にするは人の道なり」というのがあります。フェアプレイこそが誠でしょう。フェアプレイから外れたら、人として失格です。32歳の鈴木選手の歩む人の道は、まだまだ先があります。犬年の今年、西郷(せご)どんのそばにいる犬のように、その言葉を常にかみしめ、人の道を目指してほしいものです。
 それでは又、2月1日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【第1202話】
「世界でいちばんよいところ」
2021(令和3)年5月11日~20日

news image

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1202話です。 母親になって欲しい著名人1位に選ばれたのは、若者からは天海祐希さんで、40代以上の中高年からは吉永小百合さんでした。日本生命が母の日に因んで実施したアンケートの結果です。おふたりとも子どもさんはいないような気がしますが、よほど母性本能をくすぐるのでしょうか。それとも、おふたりの最初の子どもになりたいという願望なの... [続きを読む]

【第1201話】
「皆勤賞」
2021(令和3)年5月1日~10日

news image

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1201話です。 私の中学高校時代には、無遅刻無欠席者には皆勤賞、遅刻はしたが無欠席者には精勤賞というのがありました。私は6年間無遅刻無欠席で皆勤賞になり、記念に18金のネクタイピンをいただきました。卒業年度の1968という数字も刻印されています。 こんな手前味噌の話をしたのは、4月3日の河北... [続きを読む]

【第1200話】
「島田さん」
2021(令和3)年4月21日~30日

news image

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1200話です。 「新聞でお名前見てると看護士が95歳の心を癒やす」島田啓三郎。これは2月28日の河北新報の歌壇に載った歌です。島田さんは私のもう一つの住職地徳泉寺の檀家さんで、総代を勤めいただいたこともあります。しかし、去る2月25日に数え年97歳で旅立たれました。その3日後の新聞掲載だったの... [続きを読む]