テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1069話】「アウトと覚悟」 2017(平成29)年9月1日-10日

1069.jpg お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1069話です。
 「ワンナウト、ランナー一塁、バッター打ちました、セカンドゴロ、4・6・3と渡りダブルプレー」。よくある野球の一場面です。このルール用語を日本語にすると、ワンナウトは「一死」で、ダブルプレーは「併殺」と書きます。死んだり殺したりと物騒な漢字になります。盗塁のランナーを「刺す」という言い方もします。もっとも盗塁だって、塁を盗むのですから普通ではありません。野球では、1回に3度死ぬことが許され、9回までの間27度死ぬことができ、その間1点でも多く取ったチームが勝ちとなります。
 さて、今年の夏の高校野球も甲子園で様々なドラマが生まれました。わが宮城県代表の仙台育英は、優勝候補の筆頭である大阪桐蔭と3回戦で対戦しました。1対0と劣勢で迎えた9回裏育英の攻撃も2死一、二塁。あと一つアウトですべてが終わりです。育英のバッターが打ったものの、ショートゴロ。これで万事休すかと思われましたが、懸命のヘッドスライディングの結果セーフ。桐蔭の一塁手が焦ってベースを踏み忘れるという予期せぬ出来事があったのです。満塁となり、次のバッターが二塁打を放ち、逆転サヨナラ勝ちを果たしました。
 育英にとって27回目のアウトは完全な死を意味します。どんなに悔やんでも、すべてが終わってしまいます。その前に何とかしたいと必死に喰らいつく姿勢が、奇跡の逆転劇を生みました。一方、桐蔭は8回表に虎の子の一点を取ったばかり。あと一つアウトを取れば勝てるとの思いが、平常心を失わせたのでしょうか。
 勝負事は99パーセント勝っていても、最終結果が出るまでは、どうなるかわからいものです。たまたま日本語訳の野球ルールでは、死ぬとか殺すという文字が飛び交うことになりますが、ある意味、勝負の厳しさを伝えています。私は「アウト」を「死ぬ」と訳すところに人生すら感じます。
 私たちの人生で27回も死ぬことができるなら、何度か死んでいるうちに、反省をしたり、これまでと違う生き方をしてみようと考えて、思いもよらない人生を展開できるでしょうか。残念ながらそれはあり得ません。たった1回きりのアウトしか許されていません。いつも9回のイニングで27度目のアウトを目の前にしているようなものです。高校球児の場合は26度のアウトを知っているから、27度目のアウトを喫するものかと必死になれるのでしょう。
 私たちは死というアウトが必ずやってくるのに、必死に生きていないことがあります。その理由を何度もアウトを経験しているわけでないからというなら、盗塁をして刺されてしまうような言い訳です。「必死」とは必ず死ぬと書き、死を覚悟して行うことです。何度も死を経験はできませんが、必ず死ぬのだからと覚悟してして事に当たることはできます。人生における覚悟は、野球のアウトに似てませんか。
 それでは又、9月11日よりお耳にかかりましょう。

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