テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1202話】「世界でいちばんよいところ」 2021(令和3)年5月11日~20日


 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1202話です。

 母親になって欲しい著名人1位に選ばれたのは、若者からは天海祐希さんで、40代以上の中高年からは吉永小百合さんでした。日本生命が母の日に因んで実施したアンケートの結果です。おふたりとも子どもさんはいないような気がしますが、よほど母性本能をくすぐるのでしょうか。それとも、おふたりの最初の子どもになりたいという願望なのでしょうか。

 知り合いの住職さんが話していたある母親ことです。脳腫瘍のため大学3年生の息子さんに先立たれた母親は、後悔の日々を過ごしておりました。「どうして息子だけがこんな目に合わなければならないのか。私がかわってやることができなかったのか。子育ての中で、発病の原因になるようなことをしてしまったのではないだろうか」。最愛の息子を失った母親の偽らざる気持ちでしょう。

 しかし、ある時その住職さんが書いた寺の掲示板を見て、思いが変わりました。それは西條八十の「世界でいちばんよいところ」という歌でした。
世界でいちばんよいところ それは青葉のパリでしょう
いやいや、もっと近いところ それは月夜のベニスでしょう
いやいや、もっと近いところ それは桜の東京でしょう
いやいや、もっと近いところ それはあなたのお家でしょう
いやいや、もっと近いところ それはお母さまのひざの上
 息子であれば、私のような母親でも、お母さん、お母さんと言って、慕ってくれるのではないだろうか。そう思ったら心が軽くなり、救われたような気持になりましたと言っていたそうです。

 子どもにとって母親は、この世に生まれる前からお世話になっている唯一無二の存在です。母親にとっては、その子が一人前になっても、何十歳になっても、我が子どもであり、常に無事を案じているものでしょう。その意味では、どんな状況にあっても、子どもは母親の元に帰ろうとするでしょう。世界でいちばんよいところである、母の元を離れるはずはありません。

 私も寺の掲示板に母に因んだ言葉を書いたことがあります。それは「日本一短い『母』への手紙」の入賞作品です。「おふくろ死ぬなよ いいと言うまで死ぬなよ 親孝行が全部終わるまで死ぬなよ」。母親に「もう死んでもいいよ」などという子どもはいません。親孝行を全てし尽くしたと言いきれる人はどれだけいるでしょう。結局、母親にはいつまでも元気でそばにいてほしいという事なのです。そうか、母親とは、そばにいて欲しい存在の人というなら、天海祐希さんや吉永小百合さんが選ばれるのは、当然でしょうかね。

 ここでお知らせいたします。4月のカンボジアエコー募金は、259回×3円で777円でした。ありがとうございました。

 それでは又、5月21日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【1308話】
「花咲か爺さん」
2024(令和6)年4月21日~30日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1308話です。 枯れ木に花を咲かせたのは「花咲か爺さん」、被災地の荒地に花を咲かせたのは「NPO法人三島緑の会」です。静岡県三島市の団体で、東日本大震災後の2013年から日本沙漠緑化実践協会の植樹活動に参加し、毎年山元町に桜を植樹して下さっています。一昨年はコロナ禍のためお出でいただけませんでしたが、苗木を送って下さいました。縁... [続きを読む]

【1307話】
「揺らがず大遠忌」
2024(令和6)年4月11日~20日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1307話です。 たとえばですが、「正月の元旦に地震の避難訓練をします」と言われて、参加しますか?正月早々とんでもないと、誰でも思います。しかし無常なる自然は、正月とか人間の都合に忖度しません。能登半島では元旦にとんでもない地震が起きたのです。 実は能登半島は曹洞宗にとっては聖地です。曹洞宗に... [続きを読む]

【1306話】
「シッダールタ」
2024(令和6)年4月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1306話です。 「文殊丸」「行生」という2人の名前で、どなたかわかりますか。ヒントはどちらも曹洞宗に関わる方です。文殊丸は大本山永平寺を開かれた道元禅師、行生は大本山總持寺を開かれた瑩山禅師の幼名です。昔は幼い時に仮に名付ける名前や元服以前の名前を持つことがあったようです。 さて、4月8日は... [続きを読む]