テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1015話】「希望という智慧」 2016(平成28)年3月1日-10日

住職が語る法話を聴くことができます

1015.JPG お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1015話です。
 2月26日総務省が発表した国勢調査の速報値によると、昨年10月1日時点の日本の総人口は1億2711万人で、5年前の前回調査よりも94万7千人減少しました。1920年の調査開始以来、総人口が減ったのは初めてだそうです。この先更なる減少が予想されます。
 宮城県の我が山元町は、人口減少の最先端を行っています。国勢調査では、町の人口は前回調査と比べ4390減の1万2314人で、減少率26.28%です。県内で3番目に高い率です。少子高齢化に加えて、東日本大震災による影響をまともにうけています。犠牲になった方が町民の約4%に当たる636人。全壊家屋は全体の40%で2200棟を超えています。人口の自然減もさることながら、我が家を再建するにあたり、故郷を離れざるを得なかった方もたくさんいるのです。
 しかし、昨年11月町の人口が、前の月と比べて9人増えました。これは震災以降初めての増加です。戸数も5戸増えました。被災地の住宅環境が整いだして、故郷に戻ってきた方もいるからです。ただ、生まれる人に比べて、亡くなる人が倍以上という傾向は変わらないので、自然減の歯止めにはなっていません。事実、12月以降は転入者は増えても、総人口はまた減少に転じています。
 そのような中で、2月18日集団移転先へ出店第1号となるコンビ「ローソン」が開店しました。今年12月に内陸移設して運転再開予定のJR常磐線坂元駅周辺地区新市街地に隣接する一角に、24時間店の灯がともっているのです。震災以降は現在のコンビニから東の海に至るまで、住まいする人はほとんどなく、夜になると闇に閉ざされて、不気味でした。コンビニは一筋の光明です。
 お釈迦さまはおっしゃいます。「實智慧(じっちえ)の者は、即ち是れ老病死海を度(わた)る堅牢の船なり、亦(ま)た是れ無明黒暗の大明灯なり」と。「真実の智慧とは、老病死という大海を渡る頑丈な船のようなものであり、愚かさという真っ暗闇を照らす大きな灯である」ということでしょう。仏の智慧とは、現実の苦しみを超えて、理想の境地に至るための工夫です。
 人口が減り町の将来はどうなるのか、少子高齢化で老後に対する不安もあり、苦しみに満ちた現実世界です。しかし大震災から丸5年が経過しようとしている今、町は新しい姿になろうとしています。これまで闇だったところに、一日中明るい店があり、故郷に戻る人もいます。被災地の我々に求められている智慧とは、希望を持つことではないでしょうか。ある人が言いました。「生きているとは、希望が捨てられぬという意味だ」。これからは、我が人生の指揮者になったつもりで、あなた自身の明日という交響曲を演奏しましょう。指揮者なのですから、指揮棒(しきぼうを捨ててはいけません。
 ここでお知らせ致します。3月11日(金)午後5時30分 徳本寺中浜墓地跡の千年塔において、全国から寄せられた「竹灯ろう」をともして、震災犠牲者の追悼と復興への祈願を行います。希望の灯をみなさんで囲みましょう。
 それでは又、3月11日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【第1200話】
「島田さん」
2021(令和3)年4月21日~30日

news image

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1200話です。 「新聞でお名前見てると看護士が95歳の心を癒やす」島田啓三郎。これは2月28日の河北新報の歌壇に載った歌です。島田さんは私のもう一つの住職地徳泉寺の檀家さんで、総代を勤めいただいたこともあります。しかし、去る2月25日に数え年97歳で旅立たれました。その3日後の新聞掲載だったのです。 これが遺作となったかと思い... [続きを読む]

【第1199話】
「サクラサク」
2021(令和3)年4月11日~20日

news image

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1199話です。 東日本大震災の大津波で何もかもが流され、もはや元の姿に戻ることはできないと諦めの気持ちでした。ある朝、鶯の声が耳に入ってきて、我に返ったのです。こんな時にも自然は変わらず営み続けている。それから季節の移ろいをメモするようになりました。季節を感じることで、悲惨な現状に流されまいと... [続きを読む]

【第1198話】
「唯我独尊」
2021(令和3)年4月1日~10日

news image

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1198話です。 仏教ではお釈迦さまにゆかりのある3つの聖なる木「三大聖木」というのがあります。お釈迦さまがお生まれになった時の無憂樹、お悟りを開かれた時の菩提樹、そしてお亡くなりになられた時の沙羅双樹です。 お釈迦さまの母マーヤ夫人(ぶにん)は、出産のための里帰りの途中で、ルンビニの花園に立... [続きを読む]