テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第901話】「巳と己」 2013(平成25)年1月1日-10日

住職が語る法話を聴くことができます

20130101.jpg お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第901話です。
 あけましておめでとうございます。
 東日本大震災から二度目の正月を迎えました、という言い方をどうしてもしてしまいます。ともかく、時は過ぎ、どなたも新しい年に思いを新たにしていることでしょう。日本では干支でその年を表すことがあります。それで、その年のイメージを膨らませたり、生まれ歳で人を占ったりすることさえあります。今の私たちは干支が何であれ、今年も震災からの復興に全力を注いでいくことに変わりはありません。
 今年は巳年という巡り合わせです。巳は当然蛇のことです。あの時の自然の猛威には、蛇に睨まれた蛙の如くに、ただただ恐れをなすばかりでした。もっとも干支に蛙はなく、あの年は兎年でした。大震災は野山の兎をすべて追い払ったかのように、故郷を木端微塵にして、変わり果てた姿にしてしまいました。しかし、それ故に、彼の山、彼の川こそが、わが故郷だと、改めて認識された方も多いのではないでしょうか。
 それを思うと、一時のお正月気分が、何事もなかったかのような雰囲気にさせてしまい、そのまま惰性で流れてしまうことを恐れます。昨年暮れの総選挙の時ですら、震災からの復興が一番の焦点ではありませんでした。直接被災していない人にとっては、過去のことになりつつあります。また被災している人にとっては、進まぬ復興に諦めの気持ちを抱きたくもなります。それではどこにも故郷の復興は望めません。被災地の復興が日本全体のかさ上げにつながるはずです。今一度、震災の傷跡の深さを思うときです。
 それには、お互いに自分のことだけを考えないことです。今年は巳年。巳という字は己という字に一本棒を加えた形です。こじつけではありますが、この一本の棒は、己をなくして、人のために尽くす手と思いたいものです。草一本生える隙もないと思えた、瓦礫まみれのあの惨状跡地にも、草が生えました。しかし、復興への道のりは容易ではなく、覚悟が必要です。己に一本の棒を足した巳の気持ちで、まさに蛇のように地を這ってでも道を造ろうという気概がなければなりません。そしてその道づくりは、故郷全部を日本全体を良い方向に導くことになるのではないでしょうか。
 相田みつをさんの言葉に「歩けば道になる 歩かなければ草が生える」というのがあります。あの惨状を見て、せめて緑の草よ、生えて欲しいと願いました。そしてその通り草は生えました。だが、歩かなければ草薮が広がるだけです。そこには本物の蛇だけが棲みつくことになり、肝心の人が住めないのでは悲しいことです。今大地は変わらぬ自然の営みで、草を生やしてくれました。その大地に応えて、今年は私たちが、道を造ることに精進しましょう。巳年に身を粉にして・・・。
 それでは又、1月11日よりお耳にかかりましょう。

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