テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第772話】「畔道会議」 2009(平成21)年6月1日-10日

CAUN2TIA.jpg お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第772話です。
 田植えの終わった田んぼが、緑の絨毯を敷いているかのように広がっている様は、心も広くなる感じがします。とある田んぼの畔道には、二人の男の人が腰をおろして、煙草を吹かしながら、何やら語り合っています。傍らには軽トラックが止まっています。今時分、よく見かける光景です。井戸端会議ならぬ「畔道会議」でしょうか。
 お互いの田んぼの稲の生育状態について批評し合っているのでしょうか。それとも自分たちの健康状態についてでしょうか。或いは天下国家を論じているのかもしれません。いずれにしても、自分たちの力を発揮する誇らしい舞台である田んぼを前にした男の背中は、たくましく見えます。そういえば、「男」という字は「田んぼで力を出す」と書きます。
 田植えから稲刈りの収穫まで、どれだけの力を尽くすことでしょう。肥料や水の管理、田の草取り(現在は除草剤散布でしょうか)、害虫駆除など。よく言われるように、米という字は八十八と分解できますが、それほど多くの手をかけて実になるという意味合いが含まれています。勿論、田んぼという舞台は、どんなに力のある男でも、一人で作り上げることはできません。自然の力に左右されることは必定です。相互扶助の精神も大切でしょう。
 中国の古い言葉に「畔を譲りて耕す」というのがあります。田畑で耕作する人が互いに境界の畔を譲り合うことです。民情が素朴で思いやりがあることを指します。田んぼの作業の機械化が進んでいる昨今ですが、畔を譲り合うような心持は、「畔道会議」でこそ培われるのではないでしょうか。畔道に腰かけた男二人は、お互いの苦労を認め合い、また助け合いの心でこれからも収穫まで頑張ろうと励ましているのかもしれません。苦労の汗が染みた畔道(あぜみち)ならぬ「汗道(あせみち)」こそが、田んぼという舞台にあって、男の花道といえるでしょう。
 ここでお知らせです。和尚さんの舞台は本堂ですが、そこは仏の教えを説くところです。
来る6月14日(日)午後2時より徳本寺本堂において、このテレホン法話を直接みなさまにお聴きいただく「テレホン法話ライブ」を開催致します。ピアノ演奏をバックに法話を語ります。特別ゲストは、バイオリンの天才少年郷古廉君です。その演奏も是非お聴き下さい。入場は無料です。
それでは又、6月11日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【1308話】
「花咲か爺さん」
2024(令和6)年4月21日~30日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1308話です。 枯れ木に花を咲かせたのは「花咲か爺さん」、被災地の荒地に花を咲かせたのは「NPO法人三島緑の会」です。静岡県三島市の団体で、東日本大震災後の2013年から日本沙漠緑化実践協会の植樹活動に参加し、毎年山元町に桜を植樹して下さっています。一昨年はコロナ禍のためお出でいただけませんでしたが、苗木を送って下さいました。縁... [続きを読む]

【1307話】
「揺らがず大遠忌」
2024(令和6)年4月11日~20日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1307話です。 たとえばですが、「正月の元旦に地震の避難訓練をします」と言われて、参加しますか?正月早々とんでもないと、誰でも思います。しかし無常なる自然は、正月とか人間の都合に忖度しません。能登半島では元旦にとんでもない地震が起きたのです。 実は能登半島は曹洞宗にとっては聖地です。曹洞宗に... [続きを読む]

【1306話】
「シッダールタ」
2024(令和6)年4月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1306話です。 「文殊丸」「行生」という2人の名前で、どなたかわかりますか。ヒントはどちらも曹洞宗に関わる方です。文殊丸は大本山永平寺を開かれた道元禅師、行生は大本山總持寺を開かれた瑩山禅師の幼名です。昔は幼い時に仮に名付ける名前や元服以前の名前を持つことがあったようです。 さて、4月8日は... [続きを読む]