テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第990話】「奉納」 2015(平成27)年6月21日-30日

住職が語る法話を聴くことができます

990_1.JPG
 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第990話です。
 寺や神社に絵馬を奉納すると言いますが、寄付するとは言いません。絵馬は何かを祈願するとき又は祈願が叶った時に奉納する絵入りの額や板絵のことです。奉納とは神仏を楽しませ鎮めるために供えることを言います。そのお供えには、芸能や競技も入ります。神楽や相撲の奉納です。奉納相撲とは言っても、寄付相撲とは言いません。
 さて、昨年12月に奈良県の轉法輪寺様で東日本大震災についてお話をする機会をいただきました。そのご縁で今年6月になって、轉法輪寺様から「檀信徒の仏画の先生と生徒の方が仏画を奉納したいと申し出てこられました」との連絡がありました。震災からの復興を祈願して描いた仏画なので、是非納めていただきたいとのことでした。
990_2.JPG
 震災からの復興といえば、本堂が流出した徳泉寺の再建が当面の目標です。そこに奉納していただきたいのですが、残念ながら現在は本堂がありません。それでも流されても無事発見された徳泉寺の本尊さまが、徳本寺に仮に安置されています。よって、徳泉寺の本堂が再建されるまでは、徳本寺に仮に奉納させていただくことで、ご了解をいただきました。
 こうして大阪狭山市の仏画家辻岡省寶先生の描かれた「岩上 聖観世音菩薩」と「如意輪観音」の2点と、お弟子さんの堺市の藤原恵美子様が描かれた「百八体地蔵菩薩」が奉納されました。いずれも1メートル前後の額装の仏画で、堂々たる秀作です。それぞれ額の裏には復興を祈願すると記してあります。やはりこの場合、単なる寄付ではなく、願いを込めて納め奉るという奉納そのものです。遥か遠くから、丹精込めて描かれた仏画を、見ず知らずの寺に納めていただけるというのは、何という有り難いことでしょう。
990_3.JPG
 観世音菩薩とは、世音を観る菩薩ということです。世音とは衆生の声をいいます。人々の様々な声を聴き、求めに応じて救いの手を差し伸べる慈悲深い菩薩なのです。更に如意輪観音は、如意が意のままということでお分かりのように、衆生の願いを思い通りに叶えてくれる観世音菩薩です。また、地蔵菩薩はお釈迦さま滅後、56億7千万年のちに弥勒菩薩さまが現れるまでの間、苦しむ人々を救い教化する菩薩です。その地蔵菩薩が百八体描かれていますが、昔村々や道端に地蔵さんが立っていらしたように、被災地の何処にあっても、みなさんを見守っていますよというメッセージが込められているような気がします。
 3体の菩薩様の功徳は勿論のこと、奉納下さったお二人の尊いお志が、復興へ向かう私たちに力を与えてくれることでしょう。一日も早く復興できるよう精進を重ねることを誓うものです。復興の暁にはそのご報告を絵馬ならぬ写真と共にお二人に奉納申し上げます。
 それでは又、7月1日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【1317話】
「18歳と81歳」
2024(令和6)年7月21日~31日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1317話です。 「年齢7掛け説」というのがあるそうです。健康な現代人の年齢は、3割若く数えても大丈夫だということです。60歳なら42歳、70歳なら49歳、80歳なら56歳という風にです。50代・60代の頃はさもありなんと思っていましたが、さすがに70歳を超えると、8掛け・9掛けが現実に即している気がします。 さて、ある方から「... [続きを読む]

【1316話】
「不二山」
2024(令和6)年7月11日~20日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1316話です。 東京都国立市では、駅前から伸びる通りを富士見通りと称しています。晴れた日には富士山を望めるからです。2年前にこの通りにマンション建設の話が持ち上がりました。地元では景観をめぐって反発したものの、建築基準法上の問題はないということで着工、先月完成しました。しかし引き渡しまじかにな... [続きを読む]

【1315話】
「一心松」
2024(令和6)年7月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます 元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1315話です。 東日本大震災で大津波を目撃した人は、「松林の上から黒い煙が出ているように見えた」と言っていました。最大波12.2㍍ともいわれる津波が、わが山元町の沿岸部の松林を根こそぎ破壊しました。松は養分や水分がなくても育ち、塩害や風にも強いことから、防風林・防砂林として用いられてきました。し... [続きを読む]