テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1045話】「鳥瞰の年」 2017(平成29)年1月1日-10日

1045_1.jpg お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1045話です。
 あけましておめでとうございます。
 今年はトリ年ですが、鳥瞰(ちょうかん)とか鳥瞰図という言葉があります。鳥が空から地上を見下ろすように、高い所から広い範囲を眺めること、またはそうして描かれた図を言います。俯瞰する或いは俯瞰図とも言います。
 地上のちまちまとした人や建物も、上から見下ろせば、何だこんなことで悩んでいたのかと思われるような風景に出会えるかもしれません。その意味では、私はもし人間以外に生まれ変われるものなら鳥に憧れます。大陸も大海原も国境も関係なく、自由に飛べるたら素晴らしいことでしょうが、それは初夢の域でしょうか。
 さて、自転車冒険家の小口良平(おぐちりょうへい)さんという36歳の青年がいます。彼は平成19年(2007)3月から約1年かけて、自転車で日本一周をしました。その後、自分の力だけで移動できる自転車の魅力に惹かれ、自分のペースで世界を見てみようと志します。そして平成21年(2009)3月〜昨年10月までの7年7カ月をかけて、自転車ひとつでの世界一周を果たします。走破した国は157ヵ国、距離にして約16万キロに及びます。訪問国数は日本人最多で、世界でも第3位の記録だそうです。
 約10キロの荷物を積み、宿泊は民家や公共機関の敷地内でのテント泊。自転車パンクの回数は110回。タイヤ交換は20本。チェーン交換は28本。持参した本の総数は343冊。何を聞いても我々の想像をはるかに超えたものでしょう。
 意外なことは、世界のどこへ行っても、3つの言葉しか使っていないということです。「こんにちは」「ありがとう」「おいしい」という単語です。こんにちはで興味を引き、ありがとうで自分の心、おいしいで相手の心を開くというコミュニケ―ションのとり方です。あとは身振り手振りで十分に通用したそうです。
 私たちはどう頑張っても鳥にはなれません。ですから自由に鳥瞰することも簡単ではありません。しかし、小口さんは言います。3つの言葉だけでも話そうとすれば意外に伝わるし、海外に出れば、日本のことを俯瞰できる、と。なるほど世界196ヵ国のうち、157ヵ国の国境を越えた実績は、鳥のような存在かもしれません。日本人の自分とは、言葉も食べ物も肌の色も違うものだらけの中で、鳥瞰できる志がなければ、その場であっという間に埋もれてしまうかもしれません。それを救ってくれたのは、魔法の3つの言葉です。
 私たちもこの一年、せめて自分の家庭や学校・職場を鳥瞰して、自分と違う存在を認めましょう。そして「こんにちは」「ありがとう」「おいしい」の魔法使いになれば、お互い心を開けます。家庭崩壊とか、いじめ・過重労働を防ぐことが出来るのではないでしょうか。開け放たれた心から、笑顔が飛び立ちます。                  
それでは又、1月11日よりお耳にかかりましょう。

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