テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1067話】「恩に着る」 2017(平成29)年8月11日-20日

住職が語る法話を聴くことができます

1067.jpg お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1067話です。
 ブラック企業とは、従業員に長時間労働や過重なノルマなどを強いる企業です。寒々とした世相を感じさせます。一方、盆と正月の16日は、「地獄の釜の蓋も開く」と言って、仕事を休む習慣がありました。地獄の鬼でさえ罪人を煮るための釜の蓋を開けて、責めるのを休んでいるのだから、この世でも休みましょうということです。これは奉公人がこの時期、暇をもらって家に帰る「藪入り」にも通じます。
 さて、お盆の由来には、こんな説もあります。お盆は7月15日が本来ですが、月遅れの8月が一般的になってきました。また正式には「盂蘭盆(うらぼん)」と言います。元々はインドの古い言葉「ウランバーナ」を日本語風に音訳したものです。その意味は「逆さ吊りの苦しみ」です。お釈迦さまの弟子で、神通第一と言われた目連が、ある時亡き母の消息を神通力を使って尋ねます。あろうことか母は地獄の手前の餓鬼道に堕ちて、逆さ吊りの苦しみに遭っていました。慌ててお釈迦さまに救いを求めます。
 「目連よ、お前の母は生前、おまえたちには良き母であったろう。しかし、よその子どもや周りの人に対しては、冷たくあしらってしまった。自分たちだけ良ければという生き方をしていたので、今の苦しみがあるのだ」「どうしたら母を救えるでしょうか」「梅雨の時期、多くの僧侶は山に籠って修行をしているが、修行明けの7月15日に町に下りてくる。その時大勢の僧侶を招き、供物を捧げて供養のお経を挙げていただきなさい。そうすれば母を救うことができる」。目連はお釈迦さまの教えの通りに供養をしたところ、母は救われました。目連の親孝行心と日本の先祖供養が結びついて、お盆に至っているといわれます。
 勿論、地獄や餓鬼道、逆さ吊りの苦しみは現実的にはあり得ません。心の持ちようの比喩といえます。私たちは自分可愛さのあまり、貪りや怒りという逆さまな心を抱くことがあります。その反省を促す意味もウランバーナにはあるのでしょう。また、亡き人にも供養する大切さを説いたものでもあります。お盆に亡き人をお迎えするとは、普段忙しくしてご無沙汰をしている先祖に対して、今自分はその恩に報いるような逆さでない生き方をしているかと、顧みるひとときでもあるのです。
 「恩というものは 他人に着せるものではない 自分が着るものだ」池波正太郎の言葉です。ささやかなことでも相手の為にしたと、恩に着せてしまいがちな私たちです。先祖や周りの人から受けた恩をを忘れず、恩に着る生き方をお盆にこそ思い起こしましょう。そのためには、地獄の釜ならぬ先祖の後釜として、供養のためにも仕事は休み、仕事着を脱いで、先祖の恩を着てみましょう。
 ここでお知らせ致します。7月のカンボジア・エコー募金は、149回×3円で447円でした。ありがとうございました。
 それでは又、8月21日よりお耳にかかりましょう。

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