テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1087話】「生きる、そのこと」 2018(平成30)年3月1日-10日

住職が語る法話を聴くことができます

1087.jpg お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1087話です。
 「妻は寝たきりの父をひとりにできないと思って、避難しなかったんだと思います」。東日本大震災の津波で、父親と妻を喪ったあるお檀家の男性が言いました。その時奥さんはいろいろ思い巡らしたことでしょう。病人を車に乗せることのたいへんさや、避難所で迷惑をかけることになるなど。そのお宅は、海からは1キロ以上も離れたところにあったのです。
 さて東北大などの研究チームは、たまたま震災の前の年から、岩沼市で高齢者の健康状態を継続的に調査していました。その中で、津波で浸水した玉浦地区の対象者860人について、次のような分析を発表しました。震災当日亡くなったのは33人で、死亡率は3.8%。その後3年余りの間に亡くなったのは95人で、死亡率は11.5%でした。
 そして、どんな日常生活が死亡リスクに影響するかを知って驚きです。友人とよく会う人はそうでない人より、死亡リスクが2?3倍高くなるのです。親以外の家族と同居する人は、一人暮らしの人に比べ、やはり死亡リスクが倍以上になっています。更には、親と同居している人は、一人暮らしの6.7倍も高いのです。
 チームの推察はこうです。調査対象は65歳以上で、その親はさらに高齢だということです。もしかして、自分一人の避難すらたいへんな人が、親や友人を助けようとすれば、避難が遅れた可能性もあるというのです。また、家族の誰かや、友人が「ここは大丈夫」などと発言すれば、集団思考に引きずられ、避難の決断を鈍らせてしまうことも考えられると言います。
 それでも、一人暮らしの方が助かる確率が高い、というほど単純な見方はできないでしょう。また、津波の時の避難は各自で行うという事前の約束である「津波てんでんこ」という言い伝えがあります。これは生存者が死者に対して抱く自責の念を和らげる面があるのですが、現場での判断はどうでしょう。病人や高齢者という絶対的弱者を目の当たりにして、悩みためらわないはずはありません。どうして避難しなかったのかと悔やみながらも、避難できる状況ではなかったのではないかということにも、思い至らなければなりません。誰も納得できる答えは出せないでしょう。
 「死んだ者は答えてくれない。許されるように生きろ」あるテレビドラマの中のセリフです。どんな状態で亡くなろうが、死んだ人は何も言ってくれません。たとえ生き残ったとして、先に亡くなった人の言葉を聞きたいと思っても叶わぬこと。ひとつ叶うことがあるとすれば、私たちが死んだ人に、よくやっているなと認めていただける生き方をすることでしょうか。亡き人を忘れず、悲しみを乗り越えて、今を精いっぱい生きる、そのことです。
 ここでお知らせ致します。来る3月11日(日)午後2時徳本寺にて、東日本大震災復興祈願大般若法要と慰霊法要を行います。また、やまもと民話の会代表庄司アイさんの「震災と民話」というお話もあります。是非みなさんでご参加ください。
 
 それでは又、3月11日よりお耳にかかりましょう。

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