テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第920話】「仏壇と畳」 2013(平成25)年7月11日-20日

住職が語る法話を聴くことができます

920.JPG お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第920話です。
 東日本大震災で被災し、家屋が全壊した檀家さんから電話がありました。「今度ようやく家を建てることになりました。そこで、仏壇も新しくしようと思うのですが、仏壇を置く部屋は畳敷きでなければだめでしょうか」というものでした。仏壇を置く部屋は、どの部屋がいいでしょうかとか、その向きを気にしての質問はよくあります。しかし、畳との関連性を問われたのは初めてでした。
 結論から言います。仏壇と畳は特にセットではないので、フローリングの部屋でも構いません。仏壇を安置する部屋については、崇め奉るという意味で、床の間などのある上(かみ)座敷ということも言われます。しかし、現実的なことを言えば、同じ屋根の下にあるとはいえ、普段上座敷には、改まらないと出入りしないものです。それよりは、いつも家族が揃う茶の間の方が、お参りし易く、ローソク・線香の火の用心にも気を配り易くてお勧めです。向きについては、南向きが理想でしょうが、その部屋の作りによっては、南向きではお参りし難いということであれば、向きにこだわる必要はありません。家族の誰もが、いつでもお参りし易いところに置くという心がけで十分です。
 さて、冒頭の話ですが、大震災で仮設住宅に住まいしていた方々も、災害公営住宅や新たに土地を求めて新居に移る方が、最近出てきました。そして、住まいと合わせて仏壇の心配も忘れていないというところが、有り難いことです。そういう訳で、震災以降、何件も新しい家を訪ねて、新たになった仏壇の御真入れ、いわゆる魂入れのお勤めをしてきました。押しなべて言えることは、畳のある部屋は、仏壇のあるところだけということです。もはや家の大きさに関係なく、一軒の家で畳は6枚から8枚くらいしかないかもしれません。その傾向は震災前からあったような気がしますが、震災以後の住宅建設事情は、従来の和風建築が影をひそめ、西欧化に拍車がかかっています。
 大震災で一気に何万件という住宅が失われました。それをまた短期間のうちに復興させるためには、今までのような価値観にこだわってはいられないというのはわかります。あくまでも効率優先のようです。実は畳と共に、床の間の存在もあやしくなっています。なくても取り敢えずは困らない空間ではあります。床の間に飾るようなものは、壁や出窓のしかるべきところで済まされていくのかもしれません。仏壇と畳はセットではないといったものの、仏壇の前で正座して、手を合わせる姿は、日本以外では見ることができません。正座と畳はセットで考えられますが、その正座の文化もどんどん退化しています。震災の影響ばかりではないでしょうが、畳みかけるような日本文化の退化が見えています。
 ここでご報告致します。6月のカンボジア・エコー募金は、93回×3円で279円でした。ありがとうございました。
 それでは又、7月21日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【1308話】
「花咲か爺さん」
2024(令和6)年4月21日~30日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1308話です。 枯れ木に花を咲かせたのは「花咲か爺さん」、被災地の荒地に花を咲かせたのは「NPO法人三島緑の会」です。静岡県三島市の団体で、東日本大震災後の2013年から日本沙漠緑化実践協会の植樹活動に参加し、毎年山元町に桜を植樹して下さっています。一昨年はコロナ禍のためお出でいただけませんでしたが、苗木を送って下さいました。縁... [続きを読む]

【1307話】
「揺らがず大遠忌」
2024(令和6)年4月11日~20日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1307話です。 たとえばですが、「正月の元旦に地震の避難訓練をします」と言われて、参加しますか?正月早々とんでもないと、誰でも思います。しかし無常なる自然は、正月とか人間の都合に忖度しません。能登半島では元旦にとんでもない地震が起きたのです。 実は能登半島は曹洞宗にとっては聖地です。曹洞宗に... [続きを読む]

【1306話】
「シッダールタ」
2024(令和6)年4月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1306話です。 「文殊丸」「行生」という2人の名前で、どなたかわかりますか。ヒントはどちらも曹洞宗に関わる方です。文殊丸は大本山永平寺を開かれた道元禅師、行生は大本山總持寺を開かれた瑩山禅師の幼名です。昔は幼い時に仮に名付ける名前や元服以前の名前を持つことがあったようです。 さて、4月8日は... [続きを読む]