テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1089話】「都合」 2018(平成30)年3月21日-31日

住職が語る法話を聴くことができます

1089.jpg お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1089話です。
 「あったことをないことにはできない。辛く悲しいことも、それを乗り越えてきたから、今日の日がある」。東日本大震災から丸7年の3月11日、徳本寺での復興祈願と追悼法要において、みなさんに申し上げたことです。確かに日常生活を営む上での環境はかなり整ってきました。しかし、個々人の復興の度合いは異なり、あの震災をないことにしたい、あの時からの人生を書き換えたいと思っている人もいたはずです。
 そんな中、翌日の3月12日日本中に大震災ならぬ激震が走りました。学校法人・森友学園の国有地取引に関する問題で、財務省は決裁文書の書き換えを認めたのです。内容的には、「書き換え」ではなく、立派な「公文書改ざん」ともいうべきものです。改ざんとは、文書を自分の都合のいいように改めかえることをいいます。その文書は14にも及び、登場する政治家は10人、首相夫人は5回も出てきます。
 約1年前からこの問題が、国会審議されてきました。しかし「文書は破棄した」という言い逃れの前に、真相の解明ができずにいたのです。その言い逃れの見事さを買われてか、当時の理財局長は、国税庁長官に栄転しました。しかし、その長官も書き換えを認める前に、辞任に追い込まれました。ひとり詰め腹を切らされた格好です。
 公文書改ざんは、歴史を人為的に書き換えることに等しいものです。人為的とは、勿論誰かの都合のためということでしょう。「あったことをなかったことにする」、或いは「なかったことをあったことにする」などということを、紙の上で作文するのは容易いことです。最後の一線を越えてしまったのです。国が管理する財産は、誰のものでもない我々国民一人一人のものです。そこに個人的な計らいや忖度の入る余地はありません。
 歴史には良い歴史も悪い歴史もあるでしょう。いずれにしても、あったことは消せないし、なかったことを加えることはできません。被災地に住む者は、大震災以降の歴史を書き換えたいという思いを、誰もが抱いています。仏教で自分の都合通りにいかないことを「苦」と言います。苦しみの7年間でした。そして、自分の都合通りにいかないこともあることを悟ったから、苦しみを転じて別の道を歩むことができました。
 なんでも自分の都合通りにしようとするのは、苦労せず安易に満足したいという傲慢な生き方そのものです。被災地から遠く離れた花の都霞が関には、そんな傲慢な人が、ごまんといるのでしょうか。そういえば、「都合」とは「都で合う」と書きますね。
 それでは又、4月1日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【第1148話】
「空しく施す」
2019(令和元)年11月11日~20日

news image

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1148話です。 オウンゴールとは、サッカーで誤って、自分のチームのゴールにボールを入れて、相手の点数になることで、昔は自殺点とも言いました。 この度の萩生田光一文部科学大臣の「身の丈」発言は、まさにオウンゴールです。来年度からの大学入試共通テストでの英語民間試験の活用導入を見送ることになったからです。それは民間に丸投げして、英... [続きを読む]

【第1147話】
「ソプラノの声」
2019(令和元)年11月1日~10日

news image

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1147話です。 たとえば、誤ってグラスを落として割ったとします。驚いて大きな声を出すことでしょう。しかし、大きな声でグラスを割ることができるとしたら、もっと驚きです。ソプラノ歌手でその声をもって、グラスを割った人がいるそうです。想像を超えた神技のレベルでしょうか。 さて、先日行われた第... [続きを読む]

【第1146話】
「水の怖さ」
2019(令和元)年10月21日~31日

news image

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1146話です。 伊豆地方で住職をする私の先輩は、台風19号の天気予報を聴いて、寺の過去帳とおにぎり5個を須弥壇に供えたそうです。気象庁が「1200人以上犠牲者が出た狩野川台風に匹敵する」と報じたからです。狩野川台風は先輩が小学3年の昭和33年9月26~28日にかけて、伊豆半島をかすめて、東海・... [続きを読む]