テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1046話】「小鳥の一滴」 2017(平成29)年1月11日-20日

住職が語る法話を聴くことができます

1046.JPG お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1046話です。
 全国から届いた年賀状には、トリ年らしく、「羽ばたく」「飛躍」などの言葉が、まさに飛び交っています。さて、お経に出てくる興味深い鳥をご紹介します。「雑宝蔵経(ぞうほうぞうきょう)」にあるお話です。
 ある時、たくさんの動物が棲む山が火事になりました。動物たちは力を合わせて火を消そうとしました。しかし、燃え盛る火の前に、動物たちは火を消すことを諦めて、山から逃げ出します。焼き尽くされていく山を見て呆然としていましたが、仲間の小鳥がいないことに気づきました。逃げ遅れたのかと心配になりました。すると燃えている山の上の方を、小鳥が何度も行ったり来たりしているのが見えました。
 小鳥は何をやっているのだろう。様子を見ていると、小鳥は近くの池に飛び込み、ずぶ濡れになった体で舞い上がり、巨大な炎の上で、翼についたわずかばかりの水滴を落としているのです。小鳥の体です。いくらずぶ濡れになったとしても、現場に辿り着くまでにも、水は乾いたり飛んだりしてしまいます。消火活動に充てられる水は、それこそ雀の涙程度でしょう。
 動物たちは小鳥に言いました。「馬鹿なこと、無駄なことはやめなさい。あなたの小さな翼から落ちる水滴で、あの大きな炎を消せるわけはないでしょう」。煙と炎で真っ黒になった小鳥は言います。「私が運ぶ水滴で、山火事を消せないのは、十分承知です。私のやっていることは、馬鹿なこと、無駄なことかもしれませんが、この火事を見て、何もしないではいられないのです。消すことは出来なくても、消さなければという自分の想いに正直でありたいのです」。その時、これを見ていた天の帝は、小鳥の真摯な想いに打たれ、大雨を降らし山火事を鎮めたという話です。
 「微力だけど無力ではない」と言った人がいます。わずかな力でも、たくさん集まれば、そして諦めずに続けることが出来れば、きっと何がしかのことは出来ます。全く力を出さない、動かないということであれば、何もできないし、誰も気づかず、手を差し伸べてもくれません。東日本大震災から丸6年が過ぎようとする今年、亡くなった方は7回忌という節目を迎える年です。
 あの時、被災地は無力になりかけましたが、誰もが思いとどまって、微力だけどもできる限りのことは、やっていこうと心を奮い立たせました。それを見て全国の多くの方が、被災地に力を尽くして下さいました。まだ、遥に羽ばたくことも、雄々しく飛躍した姿を見せることもできませんが、羽ばたこう、飛躍しようという鳥のような想いは持ち続けていきます。どうか飛ぶ鳥を落とさず見守って下さい。
 ここでお知らせ致します。12月のカンボジア・エコー募金は、184回×3円で554円でした。ありがとうございました。
                  
 それでは又、1月21日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【第1148話】
「空しく施す」
2019(令和元)年11月11日~20日

news image

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1148話です。 オウンゴールとは、サッカーで誤って、自分のチームのゴールにボールを入れて、相手の点数になることで、昔は自殺点とも言いました。 この度の萩生田光一文部科学大臣の「身の丈」発言は、まさにオウンゴールです。来年度からの大学入試共通テストでの英語民間試験の活用導入を見送ることになったからです。それは民間に丸投げして、英... [続きを読む]

【第1147話】
「ソプラノの声」
2019(令和元)年11月1日~10日

news image

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1147話です。 たとえば、誤ってグラスを落として割ったとします。驚いて大きな声を出すことでしょう。しかし、大きな声でグラスを割ることができるとしたら、もっと驚きです。ソプラノ歌手でその声をもって、グラスを割った人がいるそうです。想像を超えた神技のレベルでしょうか。 さて、先日行われた第... [続きを読む]

【第1146話】
「水の怖さ」
2019(令和元)年10月21日~31日

news image

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1146話です。 伊豆地方で住職をする私の先輩は、台風19号の天気予報を聴いて、寺の過去帳とおにぎり5個を須弥壇に供えたそうです。気象庁が「1200人以上犠牲者が出た狩野川台風に匹敵する」と報じたからです。狩野川台風は先輩が小学3年の昭和33年9月26~28日にかけて、伊豆半島をかすめて、東海・... [続きを読む]