テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第824話】「朝シャン」 2010(平成22)年11月11日-20日

2010.11.11.jpg
 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第824話です。
 世の中には「揺り戻し」というものがあるようです。今から12年前のある調査で、小中学生の3人に1人が日の出や日没を見たことがないという結果が出ました。当然の如く、朝食をとらない子どもも増えていました。この背景には、親が早く起きられず、朝食が用意されていないという事情がありました。その代わり深夜に大食いをする傾向も見られました。多忙な大人たちが「夜型社会」を生み出していたのです。
 ところが、それから干支も一回りした今年は、「朝活」といって、朝にいろいろ活動することがブームだそうです。思えば12年前の小中学生たちが社会人になったり、それに近い年齢になっている時期です。「朝型生活に関する調査」よると、「最近、朝型生活に変わった人」は59.9パーセント、「今後、朝型生活に変更したい人」は31.3パーセントもいましたが、「夜型生活を送っている人」は8.8パーセントだけでした。夜型から朝型への変化の兆しが見えると言っていいのでしょうか。
 だいぶ前から、志のある方は、早朝の様々な勉強会に参加していましたし、学校でも朝の読書の時間を設けているところもたくさんありました。ランニングやヨガの愛好会なども普通にあったでしょう。加えて、昔は朝ごはん抜きが当たり前だったのに、今や朝からラーメンを食べたり、カレーを食べる人が増えているとか。もっとも、カレーは大リーグのイチロー選手がそうしていることの影響のようです。更には「朝シャン」といっても、一昔前の朝のシャンプーではなく、朝シャンパンを飲み優雅なひとときを過ごすサービスを、売りにするホテルもあるそうです。ここまで来ると、単なるブームだけの一過性で終わってしまうのではないかと危惧されます。
 私たち僧侶も朝こそ命です。修行時代は朝4時に起床、坐禅、本堂での朝のお勤め、内外の清掃等が一連の流れの中で粛々と行われます。朝を尊ぶのは、単なる昨日の続きではなく、新しい一日の始まりだからです。まったく昨日と同じような気候や時間の流れかもしれませんが、今日という日は、誰しもが生まれて初めて迎える日です。だから、毎日同じお経を挙げたとしても、「今日のお経」は生涯で、最初で最後のお経だから尊いし、挙げる意義があります。今日という日に出会えた有り難さに、先ず感謝して、一日を始めるという思いは大切です。
 人間の体は、朝の光を脳の奥で感じることで、体内時計がリセットされ、「新しい一日」が始まることを意識できるそうです。逆に、夜強い光を浴びれば、体が昼間と勘違し、時差ボケ状態になるとか。ほんとうに朝の光や時間を意識するなら、シャンパンを飲むという過激な行為より、朝の坐禅が打って付です。たとえ5分でも坐れば、身も心もシャンとなり、今日出会えた命に感謝できます。そんな坐禅での「朝シャン」をお勧め致します。
 ここでご報告致します。10月のカンボジア・エコー募金は、195回×3円で585円でした。ありがとうございました。
 それでは又、11月21日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【第1288話】
「手拭いと日本刀」
2023(令和5)年10月1日~10日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1288話です。 その昔、知り合いのお宅に泊めていただいた時のこと。風呂上がりに濡れた手拭いの水を切るつもりで、バサッバサッと振っていたら、当主に叱られました。その音は刀で首を切るときの音に似ているので、家ではしないよう代々教えられてきたというのです。なるほどと反省しました。 その後、無著成恭さんの講演を聴く機会がありました。無... [続きを読む]

【第1287話】
「無縁墓」
2023(令和5)年9月21日~30日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1287話です。 平成19年頃にヒットした「千の風になって」は、「私のお墓の前で泣かないで下さい そこに私はいません 死んでなんかいません ・・」と歌っています。まるでお墓には何もないかのようです。しかし歌の作者新井満さんは言います。「お墓は亡き人の『現住所』で、そこからどこへでも出かけるでしょ... [続きを読む]

【第1286話】
「夜霧の渡し」
2023(令和5)年9月11日~20日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1286話です。 「矢切の渡し」は昭和歌謡の代表曲です。「つれて逃げてよ・・」と始まる恋の逃避行の歌で、柴又から対岸の矢切に向かう渡し船が舞台です。矢切の渡しは江戸川で唯一現存するものですが、各地にも現役の渡し船は残っています。考えてみれば、人生も渡し船に乗っているようなものです。 人生の川の... [続きを読む]