テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第862話】「竜の国」 2011(平成23)年12月1日-10日

住職が語る法話を聴くことができます

20111201.jpg お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第862話です。
 GNPは国民総生産量ですが、GNHは国民総幸福量だそうです。国民総生産量はその国の経済の大きさを測る尺度ですが、国民総幸福量は精神的な豊かさを重視した指標と言えます。経済大国日本のGNPは世界のトップクラスです。果たして幸福量のGNHはどうなのでしょうか。
 先頃ブータン国王夫妻が来日して、ブータンのことが話題になりました。国民の約97パーセントが「幸せ」と回答している「幸福の国」として紹介されました。九州よりやや広い国に、70万人が住んでいる農業国。国民の多くは熱心なチベット仏教の信者です。医療や教育は無料で、たばこの持ち込みは禁じられている総禁煙国です。経済成長より国民の幸せを考えて、国民総幸福量GNHを提唱しています。
 新婚旅行を兼ねて来日したワンチュク国王夫妻は、11月18日東日本大震災の被災地である福島県相馬市を訪れました。地元の小学校で子どもたちと親しく交流しました。その時、国王は子どもたちに「みなさんは竜が存在していると思いますか」と尋ねました。誰もが竜は架空の動物との思いから、否定的でした。しかし国王は「私は竜を見たことがある」という驚くべき発言。「竜というのはみなさんの中にある人格のことです。年を取って経験を積むほど竜は大きく強くなります」と語りかけました。
 「ブータン」とは「竜の国」という意味だそうです。国旗にも国の紋章にも竜があしらわれています。竜は仏法の守護神であるからかもしれません。様々な魔物や障害・困難を竜の力で退け、多くの人に仏法を広めていきたいという願いの象徴ともいえます。国王が子どもたちに人格を竜に譬えました。それは、この度の大震災でみなさんはたいへんな状況に置かれている。元のように戻るまでには、何年もかかるかもしれない。原発の影響を受けている福島では、更に困難な生活を強いられている。君たちはその中でも成長していく。この困難を自分の中にある竜を育てる肥やしとして、大人になって欲しい。大きく強くなったその竜で、この日本を今以上に立て直してくれると信じている。そんな思いがあって「経験を積むほど竜は大きく強くなります」という言葉になったのではないでしょうか。
 奇しくも、来年の干支は辰、竜の年です。今年もたらされた、とてつもない災難を、仏法の守護神の竜のように、大きく強い力で少しでも取り除けるように、一人ひとりが覚悟して取り組む年にしなければなりません。それは生産量を求める生き方だけでは、何も解決しないことは原発事故が証明しています。これまでの私たちが体の中で育ててきたのは、生産量が高ければ幸せであるという「竜」です。大震災で多くのものを失った今、生産量以外にもある幸せというものを護る竜を育てることを、来年の(竜)にしませんか。
 それでは又、12月11日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【1326話】
「両手の作法」
2024(令和6)年10月21日~31日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1326話です。 「人間の歴史は手の歴史」と言ったのは、無著成恭さん。多くの動物は4本足で歩くので、手はなく自分でものを作れません。人間は2足歩行で、2本の手があり、田畑を耕したり、必要なものを作り、扱う作法もできます。 さて、ある高名な布教師さんが、法話の会で滔々(とうとう)と説教をしました。仏さまの教えを分かりやすく説... [続きを読む]

【1325話】
「はらこめしと仏飯」
2024(令和6)年10月11日~20日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1325話です。 わが山元町は小さな田舎町ですが、この時期、行列ができる店があります。「はらこめし」を提供している店です。はらこめしは、鮭の煮汁でご飯を炊き込み、その上に鮭の切り身とはらこをのせたものです。はらことは鮭の卵いわゆるイクラのことです。隣の亘理町荒浜が発祥の地ですが、亘理郡内に行き渡... [続きを読む]

【1324話】
「少年の心
達磨の心」
2024(令和6)年10月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1324話です。 心理学者の児玉光雄は、大リーグの大谷選手を「少年の心を持つスーパーアスリート」と表現しています。少年時代から野球を楽しむ心を忘れず、自発的に物事に取り込める姿勢が、想像を超えた活躍に繋がっているというのです。 大谷選手は50-50つまり、50本塁打50盗塁という夢のような記録... [続きを読む]