テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第989話】「百不当の一老」 2015(平成27)年6月11日-20日

住職が語る法話を聴くことができます

989.JPG
 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第989話です。
 勝ち続けていれば、いつかは負けるのではないかという不安が生まれるでしょう。逆に、負け続けていれば、いつかは勝ってみせるという希望が湧くかもしれません。東京六大学野球で東大が連敗を94で止めて、先月23日に5年ぶりに勝利しました。延長戦の末、法政大を6対4で下したのです。
 100連敗の可能性もあるのではないかという重圧とも闘いながら、諦めずに練習を重ね試合に臨んできた結果です。スポーツ選手が優遇されている他大学と比べ、東大の選手の野球の実力は、雲泥の差があるかもしれません。それでも最後に勝利したのは、2010年秋の早大戦で、この時の投手がハンカチ王子のニックネームで甲子園優勝投手となった斎藤祐樹選手でした。斎藤投手を打ち崩しての勝利ですから、より話題性のある1勝だったことでしょう。
 しかし、その次からの負け試合の長いトンネルは、絶望というレールの上を走っているような感じにはならなかったのでしょうか。東大の浜田監督は「このチームは基礎ができているから神様がほほえんでくれたのかな」と選手をたたえたそうです。なるほど今季の東大の失策は3つだけで、六大学の中では一番少ないのです。守備練習に力を入れて、ボール回しは設定したタイムを切らないと何時間でも続けるという徹底ぶりです。
 野球の基本はキャッチボールとも言われます。相手のグローブをめがけてボールを投げる。それをきちんと受け止めて、また投げ返す。ただこれだけの単純作業です。しかしそれを続けることにより、相手が気持ちよく捕球できるボールを投げるように気遣い、相手もそのように返球してきます。お互いの呼吸が通じ合うときです。東大の選手もその中でお互いに、いつかは勝とうという希望を培ってきたのかもしれません。
 曹洞宗を開かれた道元禅師の言葉に「今の一当は昔の百不当の力なり、百不当の一老なり」というのがあります。一当とは弓がひとつ的に当ったことをさしています。今の一当は、過去に何百回と失敗を積み重ねて得た力のおかげであるというのです。また一老とは老熟のことで、経験を積んで熟達したことを言います。負けても失敗しても腐らず諦めずに、すべてが経験で、良い芽が出ると信じられる人が、やがて一当を得ることができるのかもしれません。だから東大には一浪してでも入る価値があるなどと勘違いしないで下さい。それにしても、東大の野球部に入るまでには、百不当どころではない、精進があったことでしょう。
 ここでお知らせ致します。5月のカンボジア・エコー募金は、73回×3円で219円でした。ありがとうございました。
 それでは又、6月21日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【第1226話】
「師弟のナビゲーション」
2022(令和4)年1月11日~20日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1226話です。 「お寺でーす」と元気のいい声が、檀家さんの玄関先に響きました。おそらく檀家さんは、「あれ、今年の年始廻りの和尚さんの声が、ちょっと違うな」と思ったことでしょう。実は昨年縁あって徳本寺に弟子を迎えました。仙台市出身の小林信眼さん27歳です。その彼と一緒に年始廻りして、正月のお札を檀家さんにお配りしたわけです。 信... [続きを読む]

【第1225話】
「虎が転じる福」
2022(令和4)年1月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1225話です。 あけましておめでとうございます。今年は寅年ですが、「虎を野に放つ」という諺があります。猛威あるものを野放しにするということです。新型コロナが世界中に猛威を振るっている状況を思わずにはいられません。決して野放しではないでしょうが、対策がウイルスの勢いに追いついていません。丸2年も... [続きを読む]

【第1224話】
「聞声悟道」
2021(令和3)年12月21日~31日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1224話です。 作家の瀬戸内晴美さんは、51歳で出家して、寂聴という名前を授かりました。出家した者は、心乱さずして仏の声を聴くという「出離者は寂なるか、梵音(ぼんのん)を聴く」に由来しているそうです。惜しまれながら、11月9日99歳で亡くなられました。 その輝かしい生涯の中でも、一貫して反戦... [続きを読む]