テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第791話】「手作りのおもてなし」 2009(平成21)年12月11日-20日

 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第791話です。
tubaki.JPG
 世の中には一杯一万円もするコーヒーを出すレストランがあります。正確には一杯9,995円ですが、税込みでは一万円を超えます。日本で一番高いと店の人は自負しています。そんなコーヒーをほんとうに飲む人がいるのかと思いきや、やはり、その人にとって特別なハレの日などに注文があるそうです。店では記念になるようにと、カップをお持ち帰りいただいているとのことです。
 さて、私も先日記念というか、忘れられないお茶をいただきました。あるお宅に法事で伺った時のことです。そこでは、おじいさんおばあさんからお孫さんまで、家族揃って出迎えて下さいました。ご挨拶の後、お茶とお菓子が出されました。有り難くお茶を一杯いただき、着替えてお勤めをしようとしたところ、おばあさんが「どうぞお菓子も召し上がって下さい」とのこと。一瞬戸惑っていると、「このお菓子の皿は孫が作ったものです」とおっしゃったのです。
 その時気づきました。こちらのお孫さんの小学校4年生の遥香ちゃんは、今年の夏休みに、お寺の坐禅会に参加しました。坐禅も一所懸命やったけど、その他に陶芸の時間もあって、小さな皿を作りました。夏休みの終わり頃に、その皿が窯から出されて、見事な完成品になったのです。その皿が目の前にあり、お菓子が載っているのです。もう一杯お茶を所望して、美味しくお菓子もいただきました。
 食べ終わって、皿を手に取ってあらためて眺めさせていただきました。本当に味わいのある皿に仕上がっていました。そういえば、他のみんなが出来上がっても、最後まで熱心に土をこねていた遥香ちゃんの姿を思い出しました。皿の底にはちゃんと名前が記されています。世界に一つしかない銘を刻んだ皿です。
 「茶禅一味」という言葉があります。お茶をいただくときも坐禅のときも、それに成りなり切って無心の境地になれば、その道は全く同じであるということでしょう。遥香ちゃんが坐禅をして、無心になって作った皿には、禅の心がこもっています。一万円のコーヒーは確かに高いという印象はうけますが、一万円は一万円でそれ以上ではありません。しかし遥香ちゃんの皿には、お金には換算できないほど、計り知れない心がこもっています。そしてそのお茶には、深い香りの味わいがあり、手作りのおもてなしを無心にいただくことができました。因みに遥香ちゃんという名前は「遥かな香り」と書きます。
ここでご報告いたします。11月のカンボジア・エコー募金は、82回×3円で246円でした。ありがとうございました。
それでは又、12月21日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【1308話】
「花咲か爺さん」
2024(令和6)年4月21日~30日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1308話です。 枯れ木に花を咲かせたのは「花咲か爺さん」、被災地の荒地に花を咲かせたのは「NPO法人三島緑の会」です。静岡県三島市の団体で、東日本大震災後の2013年から日本沙漠緑化実践協会の植樹活動に参加し、毎年山元町に桜を植樹して下さっています。一昨年はコロナ禍のためお出でいただけませんでしたが、苗木を送って下さいました。縁... [続きを読む]

【1307話】
「揺らがず大遠忌」
2024(令和6)年4月11日~20日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1307話です。 たとえばですが、「正月の元旦に地震の避難訓練をします」と言われて、参加しますか?正月早々とんでもないと、誰でも思います。しかし無常なる自然は、正月とか人間の都合に忖度しません。能登半島では元旦にとんでもない地震が起きたのです。 実は能登半島は曹洞宗にとっては聖地です。曹洞宗に... [続きを読む]

【1306話】
「シッダールタ」
2024(令和6)年4月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1306話です。 「文殊丸」「行生」という2人の名前で、どなたかわかりますか。ヒントはどちらも曹洞宗に関わる方です。文殊丸は大本山永平寺を開かれた道元禅師、行生は大本山總持寺を開かれた瑩山禅師の幼名です。昔は幼い時に仮に名付ける名前や元服以前の名前を持つことがあったようです。 さて、4月8日は... [続きを読む]