テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第801話】「事務室の本尊様」 2010(平成22)年3月21日-31日

20100321.jpgお元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第801話です。
コンピューターが発明されたのは、今から64年前の1946年で、アメリカにおいてでした。現在ではパソコンとして個人個人が所有するまでになりました。当たり前のことですが、どんなに高いパソコンを購入しても、機械があるだけではその能力を十分に発揮できません。機械に何をして欲しいかを考え、そのためのデータを用意する必要があります。データがなければ、機械は仕事のしようがありません。そしてデータは、一つひとつ手作業で打ち込んでいくことになります。
徳本寺においても、平成10年にパソコンを導入以来、檀家さんの名簿や過去帳を整理しながら、一件一件打ち込んできました。文書の量も相当になります。わずか2〜30センチ四方で厚さ数センチのパソコンの中に、夥しいデータが貯蔵されていることになります。使い方によっては、極めて便利で、なくてはならない存在になってきました。本堂にいる本尊様がお釈迦様なら、事務室の本尊様はパソコン様と言ってもいいくらいです。
ところが、この事務室の本尊様が、この間突然機嫌が悪くなりました。全然目を覚ましてくれないのです。いつも手を合わせてから、使用していなかったことを後悔しましたが、後の祭りです。パソコンが機能しなければ、どんなにデータが入っていても、何の役にも立ちません。データは腐らないかもしれませんが、故障の度合いによっては、すべて失われてしまうこともあります。これまでコツコツと打ち込んできた努力は水の泡です。
脳トレーニングで有名になった川島隆太さんは「楽したくて 努力してきました」と言っていますが、私もパソコンに関しては、楽したくてこれまで努力してきたと自負しています。その努力が間違いとは言いませんが、どれだけ自分の能力を高めるためになったかと言えば疑問です。パソコンの能力を高め、それに頼ろうとする自分の依頼心を高めてきたことの方が、大きいような気がします。
困ったときの神頼みよろしく、自分の都合だけで手を合わせ、神仏に願いを依頼しますが、それだけで終わっては何にもなりません。願いに合うような、自分なりの努力をしなければ、願いは叶いません。事務室の本尊様も言っています。「ほんとうに楽をしたかったら、機械に覚えさせるだけでなく、自分の頭に記憶させる努力も必要だ。故障されて目の前が真っ暗くなる前に、機械だって万能ではないと、苦楽(暗く)を共にする覚悟があれば、明るく暮らせるよ」と。
それでは又、4月1日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【1308話】
「花咲か爺さん」
2024(令和6)年4月21日~30日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1308話です。 枯れ木に花を咲かせたのは「花咲か爺さん」、被災地の荒地に花を咲かせたのは「NPO法人三島緑の会」です。静岡県三島市の団体で、東日本大震災後の2013年から日本沙漠緑化実践協会の植樹活動に参加し、毎年山元町に桜を植樹して下さっています。一昨年はコロナ禍のためお出でいただけませんでしたが、苗木を送って下さいました。縁... [続きを読む]

【1307話】
「揺らがず大遠忌」
2024(令和6)年4月11日~20日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1307話です。 たとえばですが、「正月の元旦に地震の避難訓練をします」と言われて、参加しますか?正月早々とんでもないと、誰でも思います。しかし無常なる自然は、正月とか人間の都合に忖度しません。能登半島では元旦にとんでもない地震が起きたのです。 実は能登半島は曹洞宗にとっては聖地です。曹洞宗に... [続きを読む]

【1306話】
「シッダールタ」
2024(令和6)年4月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1306話です。 「文殊丸」「行生」という2人の名前で、どなたかわかりますか。ヒントはどちらも曹洞宗に関わる方です。文殊丸は大本山永平寺を開かれた道元禅師、行生は大本山總持寺を開かれた瑩山禅師の幼名です。昔は幼い時に仮に名付ける名前や元服以前の名前を持つことがあったようです。 さて、4月8日は... [続きを読む]