テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第931話】「ブランド」 2013(平成25)年11月1日-10日

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 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第931話です。
 あるホテルのピアノバーでのこと。男性がピアニストにリクエストをしました。「『砂漠の赤い月』を弾いてくれ」ピアニストはこともなげに、弾きはじめました。男性は連れの女性に言いました。「あのピアニストは嘘つきだ」「どうして」「だって「『砂漠の赤い月』なんて曲は、どこにもないんだ。ちょっとからかってみたのさ」「そうだとしたら、粋な嘘つきね」と言って、女性はうっとりとその音色に聴き入っていました。
 『砂漠の赤い月』という曲は、ありそうなタイトルですが、立派な嘘。ピアニストは曲を知らない、弾けないとは一切言わず、それらしい雰囲気の演奏を披露して、誰をも良い気分にしたのでした。騙されても心地よい嘘もあるのですね。昔聞いた「ちょっといい話」です。
 さて、昨今のホテル業界では、ちょっとどころか、「とんでもなく悪い話」があるようです。大阪市の阪急阪神ホテルズ系のレストランで、メニュー表示と異なる食材が使われた問題で、社長は辞任に追い込まれました。「ブランド全体の信頼の失墜を招いた。故意に欺く意図はなかったが、偽装と指摘されても仕方ない」などと弁明していました。
 バナメイエビを「芝海老」として提供したのは、調理担当が小さなエビは芝海老と称するものという認識の誤りから派生したといいます。九条ねぎを使っていないのに、九条ねぎと称したのは、添え野菜の変更は表示の必要がないとサービス担当が判断したという訳のわからない言い訳です。
 よほど舌の肥えた人でも、食材の違いを指摘できる人は多くありません。ただおいしいものは、食べたい。そうなると、どこそこの何はおいしいという、評判や知識が舌の代わりになってきます。そこは食べる方もブランドに頼ってしまうわけです。ましてや、一流のホテルで提供されたものとなれば、全幅の信頼を置いてしまいます。少々値が張っても、「やはり本物は違う」と満足して、財布の紐を緩めるわけです。
 名前やブランドが広く知られるようになるには、それ相当の時間がかかります。しかも誰からも信用されるような態度や物を提供し続けて、はじめてみなさんに認知されるようになるのです。それだけに、たった一つの裏切りであっても、それまで信用してきたことへの反動が激しくなることは想像に難くありません。
 私たちには、仏教徒として守らなければならない十の戒めの第4番目に「不妄語戒(ふもうごかい)」があります。嘘や偽りを言ってはならないということです。これは、嘘や偽りを言おうとしても、仏の教えを信じるものとして、とても言えるものではありませんとも解釈できます。ホテルにおいては、偽りをしようとしても、ブランドが邪魔をしてとてもそんなことはできませんという気概が求められます。「砂漠の赤い月」を見上げるように、乾いた現代にあって、聳えるホテルの建物を嘘の塊とみられたらおしまいです。そうなればブランドもブラインドも閉じなければなりません。
 それでは又、11月11日よりお耳にかかりましょう。

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