テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第872話】「供養の石」 2012(平成24)年3月11日-20日

住職が語る法話を聴くことができます

20120311-2.jpgお元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第872話です。
 Mさんは3月1日に高校を卒業し、将来の夢に向かって歩み始めていました。そのひとつに、車の運転免許を取ろうと、自動車教習所に通っていました。その教習所は比較的海沿いにありました。その日教習を終えて、帰宅する途中で東日本大震災の大津波に襲われて、一緒だった友だちと共に犠牲になってしまいました。高校卒業後わずか10日余りで、夢の途中での生涯を閉じざるを得ませんでした。
 ご両親はじめ、ご縁の方々は言いようのない悲しみと無念の極みの中で、この一年間を過ごしてきました。そして、一周忌を前にしたある日、娘のために新しく墓石を建てたので拝んで欲しいという依頼がありました。ご先祖の墓石の傍に、小さいながらも楚々とした感じの石が建てられ、きれいな花が飾ってありました。石には「歩む」という漢字一文字が大きく刻まれ、その下には「まっすぐに 自分の道 ただ信じた道を 真っすぐに 進むだけ」という文字が書いてあります。
 その字はMさん本人の直筆だというのです。書道部だったMさんは、様々な言葉を筆で書き遺していました。その中から、ご両親が娘さんを偲ぶのにふさわしいものをと、選んで石に刻んだということでした。整って尚且つ勢いのあるその字は、亡きMさんの人柄そのものに見えました。しっかり者でがんばり屋さんだったとは聞いていましたが、それを十分に裏付けるような書体でした。更には、Mさんはピアノが好きだったというので、ピアノの鍵盤の模様も石に施してありました。「亡くなった娘にしてあげられることは、このぐらいしかできませんから・・・」と、ご両親は静かに手を合わせていらっしゃいました。
 そして「まっすぐに 自分の道」という言葉に、昨年大震災鎮魂歌として作った「千年眠れ」という歌の歌詞が重なりました。
  
  ♪私はずっと祈ります 忘れません
   だから千年経ったら 目覚めなさい
   あなたがいつも夢見ていた 遥かな道が
   まっすぐここに続いている そう信じて
 あの時亡くなった人は、誰もがそれぞれMさんのように夢を抱いて、それに向かっていたことでしょう。残念ながら、自分で叶えることはできなかった。それでも、生きていたら進んだであろうまっすぐな道。もし壊れていたら、残された私たちが直しながら進み、亡き人の夢をつないでいかなければならないのではないでしょうか。もはや、亡き人の声は聞こえません。しかし、石に刻まれた想いは、消えることなく、いつも私たちに「歩みを止めないで」という、まさに仏さまからの励ましになることでしょう。素晴らしい一周忌の供養の石でした。
 ここでご報告致します。2月のカンボジア・エコー募金は、161回×3円で483円でした。ありがとうございました。
それでは又、3月21日よりお耳にかかりましょう。

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