テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第846話】「不動心」 2011(平成23)年6月21日-30日

住職が語る法話を聴くことができます

201106210-2.jpg お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第846話です。
 阪神大震災はマグニチュード6・9、関東大震災は7・9でした。この度の東日本大震災は9・0です。今思っても、あの時はとても室内にいられる状況ではありませんでした。慌てて外に出たものの、何かにつかまらなければ立っていられない程でした。
 揺れが収まってから、おそるおそる徳本寺の本堂の中に足を踏み入れました。白壁が落ちて堂内は埃だらけでした。落ちそうなものはちゃんと落ち、傾くものは見事に傾いていました。特に須弥壇のところが悲惨でした。文殊菩薩像・普賢菩薩像や金蓮華・灯籠・位牌などが傾いたり、須弥壇から落ちて自らも怪我をし、他も傷つけるという有様です。しかし、不思議なことにご本尊のお釈迦さまだけは、1センチも動いていませんでした。
 もうひとつの住職地である徳泉寺は、海岸線から数百メートルのところに位置していました。真っ先に大津波に呑まれたようです。本堂も庫裡も建物ごと流され、中にあった仏像仏具あらゆるものの影も形もありません。残ったのはコンクリートの土台だけです。落ちるものも傾くものもなく、ただ気落ちし、心が傾くばかりでした。ところが、震災から24日経った4月3日に、徳泉寺のご本尊であるお釈迦さまが戻って来たのです。数キロ離れた田んぼにあった仏像を見つけた檀家さんが、届けて下さいました。台座や光背はありませんでしたが、ご本体が多少傷んだ程度で、その輝きも失せていませんでした。
 今1センチも動かなかったご本尊さまと、流れ流されても無事戻られたご本尊さまに日々手を合わせながら思っています。ご本尊さまは、こういう時だからこそ私を拝みなさいと仰っているのではないかと。ふたつの寺合わせて約200名の犠牲者がおり、家や田畑を失った方は何百軒にも及びます。混乱するなという方が無理です。しかし、世の中みんなで混乱していては、先が見えません。誰かが鎮めなければなりません。
 仏さまを拝むということは、救いを求めるということではありません。よく、どうか私たちをお守り下さいと言って手を合わせる方がいますが、自分は何もしないで、限られたお賽銭をあげただけで、願いだけは叶えてもらいたいというのは都合のいい話です。仏さまを拝むとは、仏さまの教えを学ぶということです。その教えのように生きていきますから、そんな私をお見守り下さいということなのです。「交通ルール守るあなたが守られる」と同じことです。
 揺れようが動かず、流されようが留まったご本尊さまは、無常の世にあって、不動の心の大切さを示して下さっています。それはどんな時も見失ってはならない「信じるという心」です。仏を信じ人を信じて、初めて自分を信じることができます。自分を信じる人はどっしりとして、うろたえません。今こそほんとうの不動心をマグニチュード9・0並みに、奮い起こすときです。
それでは又、7月1日よりお耳にかかりましょう。

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