テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第932話】「お墨付き」 2013(平成25)年11月11日-20日

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 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第932話です。
 仕事柄、毎日のように筆を使いますが、いわゆる作品は書きません。必要に迫られて書く塔婆や位牌の文字がほとんどです。そこには芸術性も味わいもありません。極めて事務的で、書道とも言い難いです。しかし、先輩の和尚さんに言われたことがあります。「和尚さんは筆が立つに越したことはないが、塔婆や位牌の字は拝まれるものだということを忘れてはならない。上手下手よりも、拝んで有り難いと思われるような字を書きなさい」と。
 上手下手の区別はある程度つくこともありますが、拝んで有り難い字というのは、書いている私も解りません。書の世界はほんとうに奥が深いものです。ましてや、展覧会に出品するような作品ともなれば、どれもが素晴らしいものです。そこで入選作を選ぶのは至難なことでしょう。どの作品もまさに紙一重の差もないくらいでしょう。だからというわけではないでしょうが、106年の歴史を誇る日展の「書」で、有力会派に入選数を事前に割り振るという不正が発覚しました。
 書や絵などの芸術性は、数値化できるものではありません。それだけに審査の難しさと、審査基準の解りにくさも生まれます。今回の不正の下となったものに「天の声」があるといいます。審査員が入選を決めても、直前に日展顧問といわれる方の無言の圧力により、審査結果を取り下げ、「天の声」の指示通りに差し替えたという事実が明るみになりました。
 日本美術界では日展入選という実績が何よりものをいうそうです。更に階級制度が厳然としてあります。優れた賞を受賞するたび、階級が上がります。階級が上がるほど弟子が集まり、収入も増えるしくみになっています。日展の入選数は会派運営に多大な影響を及ぼします。入選数が少ないと弟子が集まらず、別の会派に移ることもあります。会派間の入選者の割り振りは、ある意味会派同士の共存共栄に繋がっているのかもしれません。しかし、それは芸術の命を無視して、会派の命だけを考えている姿です。当然の如く、そこにはお金が絡んできます。出品するだけでは入選はできない、審査員の作品を買わないとだめとか、入選すれば高額の謝礼を会派代表に持っていくとか、さもありなんです。
 中国・北宋の時代の蘇軾(そしょく)の言葉に「人 墨を磨るに非ず 墨 人を磨る」というのがあります。日展の書道界で一目置かれているような方は、これまでにどれほど墨を磨って現在に至ったことでしょう。ご自分の地位や会派の存在だけを磨いてきたのでしょうか。書を通して人格も磨かれていれば、「お前の書には、その人格が滲み出て拝みたくなるほどだ」という、それこそ天からのお墨付きがいただけるはずなのですが・・・。
 ここでご報告致します。10月のカンボジア・エコー募金は、131回×3円で393円でした。ありがとうございました。
 それでは又、11月21日よりお耳にかかりましょう。

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