テレホン法話
~3分間心のティータイム~

第752話「低音の魅力詐欺の魔力」 (2008.11.11-11.20)

 “低音の魅力”で知られた歌手のフランク永井さんが、10月27日に亡くなっていたと大きく報じられました。宮城県出身でした。昭和32年「有楽町で逢いましょう」が大ヒットしてムード歌謡のスターに。ご当地ソングの元祖とも言うべきこの曲は、そごうデパートが東京進出を図ってタイアップしたCMソングだったといいますから、当時としては画期的ともいえる"オシャレな"歌でした。
 日本全国の誰もが、「有楽町」という町に行ったことはなくても、この歌によってその名前を知りました。「有楽町」というその名の通り、どんなにか楽しみが有って、華やかな町なんだろうと憧れたことでしょう。まさに一世を風靡した歌だったのです。高度成長期の幕開けを告げる歌でもあったのかもしれません。
 そして、奇しき巡り会わせでしょうか、フランク永井さんの死亡報道があった翌日の11月4日、高度成長期の頂点ともいうべき、1990年代の音楽界を席巻したといわれる作曲家でありプロデューサーの小室哲哉が、5億円詐欺容疑で逮捕されました。
 安室奈美恵、globeなどの曲を手がけ、4年連続レコード大賞受賞、100万枚以上の売り上げが20曲もあり、一時代を築きました。一時は年収が30億円を超え、納税番付で全国4位にもなっています。それが、海外に進出し事業の失敗による多額の借金を作り、今回の事件につながったとみられています。
 「一世を風靡する」「時代を席巻する」いずれも、その時代の人々の心を、何らかの形で捉えて止まないものがあったということでしょう。「有楽町で逢いましょう」が世に出て51年。今も懐かしがられ、歌いつがられている名曲です。それ故に、フランク永井さんの死を、多くの人が悼みました。
 一方、世界の音楽市場をも視野に入れて、時代の先端をゆく「小室サウンド」は、自らの不祥事で、不協和音の産物と化しています。果たして、50年後の評価はあるのでしょうか。
 音楽が流れているだけで、時代を作ることはできません。あくまでも、その音楽に共鳴する人の心が多く集まって時代となるのでしょう。そのことを忘れて、人の心を欺くようでは、時代のサキ・・を読んだのではなく、サギ・・を企てただけと言われるのがオチです。
 ここでご報告致します。このテレホン法話を3分間聴いていただくと3円がカンボジア募金になる10月の「エコー募金」は、267回×3円で801円でした。ありがとうございました。
それでは、又11/21よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【第1269話】
「博士の理想郷」
2023(令和5)年3月21日~31日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1269話です。 その老人の肩には無数の傷跡がありました。「どうしたの」と家の者が聞くと、「自分で作った赤痢ワクチンを注射して、反応や経過を観察した、いわば自分を材料にした人体実験だ」というのです。その老人こそ、赤痢菌発見者として世界的に著名な志賀潔博士です。 博士の生まれは仙台ですが、昭和20年に我が山元町磯浜に家族と共に移り... [続きを読む]

【第1268話】
「嵩上げ復興」
2023(令和5)年3月11日~20日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1268話です。 東日本大震災翌日の朝早く、避難所になっている坂元中学校に行きました。そこは少し高台になっていて、町の海側の方が見渡せる位置にあります。何と松林もなければ、民家も一軒も残らず、どす黒い大地と化していました。道路も判別できず、線路も流されるというありさまです。ただ、坂元駅の高架橋だ... [続きを読む]

【第1267話】
「希望に勝る意志」
2023(令和5)年3月1日~10日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1267話です。 先日、東日本大震災に関して、地元テレビ局のアナウンサーから取材を受けました。終わってから逆取材をして、彼女に震災の時のことを聞いてみました。当時彼女は仙台市の中学3年生とのこと。震災の翌日に卒業式を控えていたのですが、当然行われませんでした。「私、中学を卒業していないんです」と言うのでした。 あの時中学生だった... [続きを読む]