テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第783話】「道との遭遇」 2009(平成21)年9月21日-30日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第783話です。
 yamamoto_40.jpg先日開通した県内で初めての常磐自動車道としての山元・亘理間を車で走る機会がありました。8年前から工事が始まり、毎日のようにその側を走りながら進捗状況を眺めていました。田んぼの中に城壁でも造るかのようにして、道路が形になっていく様は、極めて人工的な風景でした。獣道(けものみち)ではありませんが、道の原点は、人や動物たちが足繁く通ううちにできたというものだったのではないでしょうか。今や、歩くだけの道ではなく、車も走ることを考えなければなりません。勿論、高速道路は、歩くための道路ではなく、車が走るため、しかもより速く目的地に着くためにあります。
 山元・亘理間の距離は、11.5キロです。事業費は約310億円で、1キロあたりに27億円かかっています。たった1メートル進むにも、270万円もかかることになるわけです。因みに、この道路を使っていつもと同じ目的地に着くまでの時間は、これまでより約8分短縮されました。その効果のほどを語るのは、まだ先のことでしょう。ただ道路を造るには、たいへんなお金と技術がいる大事業であると、改めて実感しました。
 さて、道は道でも、仏道という道があります。ここで言う道には、教えという意が含まれています。お金や技術は関係がありません。その根本の教えに「平常心是道(へいじょうしんこれみち)」というのがあります。どんな時も心を平常に保つことがたいせつであり、また平常の心がけがしっかりしていれば、いざというとき、特別に覚悟しなくとも、ことに当たることができるというものです。
 日常茶飯事と言いますが、お茶を飲む時はお茶を、ご飯を食べる時はご飯を、そのことに成りきっていただけば、その味もよくわかりおいしさも増します。何ら奇をてらったことではなく、ごく自然の振る舞いの中に仏道があります。それは安らかな人の道の歩みでもあります。
 出来たての高速道路といういささか不自然さが否めない道を走っていると、「平常心」が薄らいでいくのが分かりました。高いところから見下ろすからでしょうか、少し尊大な気持ちでハンドルを握り、アクセルも深く踏み込む自分がいます。高速道路というには人間のエゴが満ちているようです。せっかく出来た立派な道で、事故などという未知との遭遇になりませんように、「平常心」を忘れないようにしたいものです。
 それでは又、10月1日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【1317話】
「18歳と81歳」
2024(令和6)年7月21日~31日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1317話です。 「年齢7掛け説」というのがあるそうです。健康な現代人の年齢は、3割若く数えても大丈夫だということです。60歳なら42歳、70歳なら49歳、80歳なら56歳という風にです。50代・60代の頃はさもありなんと思っていましたが、さすがに70歳を超えると、8掛け・9掛けが現実に即している気がします。 さて、ある方から「... [続きを読む]

【1316話】
「不二山」
2024(令和6)年7月11日~20日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1316話です。 東京都国立市では、駅前から伸びる通りを富士見通りと称しています。晴れた日には富士山を望めるからです。2年前にこの通りにマンション建設の話が持ち上がりました。地元では景観をめぐって反発したものの、建築基準法上の問題はないということで着工、先月完成しました。しかし引き渡しまじかにな... [続きを読む]

【1315話】
「一心松」
2024(令和6)年7月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます 元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1315話です。 東日本大震災で大津波を目撃した人は、「松林の上から黒い煙が出ているように見えた」と言っていました。最大波12.2㍍ともいわれる津波が、わが山元町の沿岸部の松林を根こそぎ破壊しました。松は養分や水分がなくても育ち、塩害や風にも強いことから、防風林・防砂林として用いられてきました。し... [続きを読む]