テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第851話】「千年眠れ」 2011(平成23)年8月11日-20日

住職が語る法話を聴くことができます

 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第851話です。20110811-2.jpg
 キリスト教なら「復活」という言葉を使いたいところですが、仏教では「復活」ということはありません。お盆のこの時期、ご先祖さまはじめ亡き人は、「帰って来る」のです。「復活」ではない証に、お盆が終われば亡き人は帰って行ってしまします。今年のお盆は、いつもより多くの亡き人が帰って来ます。東日本大震災で亡くなった1万5,600人以上の方が、斉しく初盆を迎えます。
 あの3月11日のことを思えば、正直言って遺族の方は、亡くなった人がどんな宗教を信じているにせよ、単に帰って来るだけでなく、震災前の元気な姿に「復活」して欲しいという気になることでしょう。世界中の誰もがあのような地震も津波も襲ってくるなど、微塵も思っていなかったはずです。亡くなられた方々も、当たり目に普通の生活を営んでいました。自宅で語らっていた人、畑で仕事をしていた人、車を運転していた人、学校で勉強をしていた人等々、みんな何が起きたのか納得できないうちに、亡くなってしまいました。生活している姿そのままで、死ぬという意識すら持つことができなかったかもしれません。
 更に遺族の方は、目の前から何の予告もなく突然に消えてしまった愛しい人に対して、逢いたい思いが募るばかりです。とても死んだとは思えない。逢えるなら、たとえ千年経ってからでもいいから逢いたい。それまでは、眠っていると思うことにします。あなたが千年経って目覚めたときに、こんな素晴らしい世界に生まれ変わっていたのかと喜んでもらえるように、私は前を向いて進みます。死んだとも思いたくないけれど、今すぐ逢うことも叶わないのなら、瓦礫の大地に花を咲かせて、あなたを忘れずに祈り続けます。
 数え切れない遺族の方の想いを聞くうちに、「千年眠れ」という歌詞ができました。作曲と歌は、奈良県教恩寺の尼僧さんでシンガーソングライターのやなせななさんです。
♪私はずっと祈ります 忘れません
  だから千年経ったら 目覚めなさい 
  あなたが最後に見たはずの 小さな花が
  きっとここに咲いている そう信じて
 お盆に合わせて、東日本大震災鎮魂歌としてCDになり発売されました。――風が吹く ほとけ来たまふ
けはひあり――(高浜虚子) お盆には風の如く帰って来て、風の如く去ってしまうほとけたちではありますが、それは私たちが忘れないという思いを持ち続けていればこそなのです。たとえ姿かたちは見えなくとも、千年後に相見えることができると想像することも、ひとつの供養です。そして、今すぐのほとけさまとの復活折衝は叶いませんが、切々と歌うやなせななさんの「千年眠れ」は、私たちの心の復活絶唱されているかのようです。
 ここでご報告致します。7月のカンボジア・エコー募金は、317回×3円で951円でした。ありがとうございました。
 それでは又、8月21日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【1317話】
「18歳と81歳」
2024(令和6)年7月21日~31日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1317話です。 「年齢7掛け説」というのがあるそうです。健康な現代人の年齢は、3割若く数えても大丈夫だということです。60歳なら42歳、70歳なら49歳、80歳なら56歳という風にです。50代・60代の頃はさもありなんと思っていましたが、さすがに70歳を超えると、8掛け・9掛けが現実に即している気がします。 さて、ある方から「... [続きを読む]

【1316話】
「不二山」
2024(令和6)年7月11日~20日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1316話です。 東京都国立市では、駅前から伸びる通りを富士見通りと称しています。晴れた日には富士山を望めるからです。2年前にこの通りにマンション建設の話が持ち上がりました。地元では景観をめぐって反発したものの、建築基準法上の問題はないということで着工、先月完成しました。しかし引き渡しまじかにな... [続きを読む]

【1315話】
「一心松」
2024(令和6)年7月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます 元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1315話です。 東日本大震災で大津波を目撃した人は、「松林の上から黒い煙が出ているように見えた」と言っていました。最大波12.2㍍ともいわれる津波が、わが山元町の沿岸部の松林を根こそぎ破壊しました。松は養分や水分がなくても育ち、塩害や風にも強いことから、防風林・防砂林として用いられてきました。し... [続きを読む]