テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第979話】「貸出しカード」 2015(平成27)年3月1日-10日

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 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第979話です。
 ―「あったよねこの本うちに」流された家の子が言ふ移動図書館―今年の歌会始に選ばれた千葉県の平井敬子さんの歌です。この移動図書館とは、もしかしたらシャンティ国際ボランティア会が東日本大震災被災地で行っている移動図書館活動のことかもしれません。わが故郷宮城県山元町にも、震災翌年の平成24年9月より、シャンティによる移動図書館活動が行われています。
 山元町は沿岸部に位置し、可住地域の60%が浸水しました。浸水割合は県内最大クラス。家屋の40%にあたる2,217棟が全壊し、その内の約半数は流出です。当時の震災瓦礫は53万3千トンで、町のゴミの量に換算すると、実に152年分に相当するそうです。それまで当たり前に身の回りにあった、ありとあらゆるものが流されてしまったのです、愛読書も含めて。635人もの尊い命も犠牲となってしまい、人々の喪失感は想像を絶するものがあります。
 被災した人々は緊急避難所生活を経て、仮設住宅に住まいするようになったものの、衣食住が十分に足りているとは言えません。それでも人はパンのみにて生きるに非ずです。心の栄養補給もなくてはなりません。そんな時にシャンティの移動図書館活動という支援がやって来たのです。
 仮設住宅に玄関横づけともいえる親しみやすい移動図書館車は人々に歓迎され、8カ所の仮設住宅を月2回くらいの割合で運行します。1カ所あたり1時間ほどの「開館」ですが、「立ち読み お茶のみ おたのしみ」というキャッチフレーズの如き活動が展開されます。たとえ借りる本がなくても、誰かに会えてお茶の接待を受けられることを心待ちにしているようです。
 それでも利用者数と貸出本の冊数は年々減少しています。運行初年度は3カ月間だけでしたので、759人の利用者で、1,382冊の貸出しでした。翌年平成25年は2,568人で6,310冊、平成26年は2,083人で4,269冊でした。1年間で500人と2,000冊減っていることになります。その主な原因は明らかです。仮設住宅を出ていく人が増えているということです。それは喜ばしいことなのです。何もかも流されて仮の住まいから、普通の日用品に囲まれた定住地に落ち着けることが、復興の最小限度の到達点でしょう。
 移動図書館をよく利用して、現在は新たな定住地に移った方が言っていました。移動図書館で使った貸出カードは、仮設住宅の暮らしを象徴する思い出の品となり、捨てられずに大切にしまっているそうです。本を含めた思い出の数々が流され、憔悴し切っていたとき、移動図書館で心の栄養補給ができた人も確かにいたのです。そして、今度は一枚の貸出しカードという思い出ができ、それを肥やしに、新天地で新しい芽を育む人が、一人でも多く生まれる震災5年目でありますように願うものです。 
 それでは又、3月11日よりお耳にかかりましょう。

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