テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1008話】「いい思い出」 2015(平成27)年12月21日-31日

住職が語る法話を聴くことができます

1008.JPG お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1008話です。
 除夜の鐘をあるお寺さんは、大晦日の午後10時30分から撞き始めるそうです。一定の間隔で撞き続け、108回目がちょうど午前零時になるようにしているといいます。1時間半かけて除夜の鐘を撞くわけです。それを聴いている人は、一声響くごとに、過ぎし一年を想うことでしょう。そして、108回目を聴いて迎える元旦に、どんな想いを託すのでしょうか。
 今年もいろいろありました。和尚として振り返らなければならないことは、どれだけの人に成仏していただくことができたかということです。もしかして、「この1年間で、手抜きをせずに成仏に導いた葬儀がいくつあったか」という反省のことと思われた方がいたら、それは違います。
 成仏とは仏になることです。では「仏」とは何でしょう。たいていの人は、亡くなった人のことを思うかもしれません。決して間違いではありませんが、十分な答えとも言えません。「仏」とは、仏さまの教えを常に我がこととして、それに沿った生き方のできている人を言うのではないでしょうか。言うは易く、行うは難しです。1年365日1日24時間、天気が変わり続けるように、人の心も定まりません。
 喜怒哀楽の情に流される日々を送ることの多い私たちです。その情が激しすぎると、仏さまが見えなくなるときがあります。そんなとき、ささやかではありますが、このテレホン法話を聴いて、少しでも仏の心を取り戻すきっかけになればという願いを込めて、発信し続けてきました。おかげさまで、今年10月に千話目の法話をお伝えできました。先日、テレホン法話をお聴きになった横浜市の女性の方から、「胸に響きました。丁度悩んでいた時です。でも恨まないで、その人の為に幸せを祈りましょう!ありがとうございました」というお便りをいただきました。「人の為に幸せを祈る」十分に仏さまです。
 ひとりでも多くの方に、1日に5分でも10分でも仏さまの心を観じられるような生き方をしていただけただろうかというのが、和尚としての振り返りです。「いい思い出だけが残ること それを成仏と言うんです」。これは他宗の和尚さんの言葉ですが、わかり易いです。ほんとうの意味での、「いい思い出」とは、自分に都合のいいことだけではなく、他の人にとってもいい思い出となっていることを共有できるものを言うのでしょう。他の人をほっとけない人ほど、さまです。今年どれだけ人の幸せを祈りましたか。除夜の鐘はお寺で撞きますが、幸せの鐘を鳴らすのはあなた・・・です。
 ここでお知らせ致します。テレホン法話の千話を記念して、テレホン法話集『千話一話―3.11その先へ』(定価千円)が発売されました。書店もしくは徳本寺でお求めください。徳本寺にはこちらからお申込みください。
 みなさま良いお年をお迎え下さい。それでは又、来年1月1日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【1322話】
「醍醐味は元気でゆっくり」
2024(令和6)年9月11日~20日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1322話です。 牛乳の精製過程の5つの味のうち、最後に出てくる最上の味を醍醐味と言います。仏教ではそれを最高の境地の涅槃にたとえます。そして醍醐の原語は「サルピル・マンダ」で、あのカルピスの名称の元であると言われます。そのカルピスが好物で、116歳の今も元気で世界最高齢に認定されたのは、兵庫県の糸岡富子さんです。 カルピスと長... [続きを読む]

【1321話】
「0歩目の奇跡」
2024(令和6)年9月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1321話です。 1996年8月21日(水)甲子園の決勝戦は、松山商と熊本工。3対3の同点で10回裏熊本工の攻撃、1死満塁で3番本多選手。松山商は絶体絶命のピンチ。監督は守備交替で矢野選手をライトに起用。その直後、本多選手の打球は高々とライトへ、3塁ランナーは俊足の星子選手。実況中継も「行った、... [続きを読む]

【1320話】
「必死すなわち」
2024(令和6)年8月21日~31日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1320話です。 パリ・オリンピックの新競技「ブレイキン」は、1970年代アメリカニューヨークの貧困地区の路上が発祥。縄張り争いに疲れたギャングのボスが「音楽と踊りで勝負しよう」と呼びかけたのが始まりとか。オリンピックにふさわしいです。 オリンピックは元を糺(ただ)せば、戦争の代わりに様々な争... [続きを読む]