テレホン法話
~3分間心のティータイム~
【第852話】「嗣法認定」 2011(平成23)年8月21日-31日
住職が語る法話を聴くことができます
お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第852話です。
この度の東日本大震災では、ペットも受難しています。あるお檀家さんで飼っていた猫が、地震を境にどこかへ行ってしまいました。でも、不思議なことに、その後間もなく別の猫が棲みついたというのです。震災で家が壊れたり流されたりした猫なのか、あるときふらりと迷い込んで来たようです。出て行ってしまった猫の身代わりと思い、今は新しい首輪をつけて可愛がっていました。出て行った猫と、迷い込んで来た猫で、その家では帳じりが合っているのでしょうか。
しかし、人間の行方不明の場合は、簡単ではありません。この度の大震災の犠牲者は1万5600人を超えています。行方不明者は今もって4600人以上に上ります。一軒の家で犠牲になられた方と、まだ行方不明のままの方を抱えているところもあります。そのような中で、「死亡認定」の手続きをする家族もあります。普通の災害で行方不明になったとしても、一年以上経たなければ死亡と認められませんでした。今回の大震災ではそれを3ヶ月に短縮しました。これは、家族が遺産相続や死亡保険金の受け取りを、早めにできるようにという配慮のためです。生きていく上で、そのことも大事なことに違いはありません。
もっと言えば、死を認めるということは、どんなに手を尽くそうと二度と逢うことはできないと諦めることです。大切な人がいない状態で、自分たちの力で、新しい一歩を踏み出そうと心に決めることです。そのために、人は古来より亡き人を手厚く弔い、供養をしてきました。故人への供養は即ち自分を納得させる行為でもあるわけです。亡骸(なきがら)にすがりついたり、火葬に立ち会うことにより、徐々に死を現実のものとして、受け容れていくことができます。
「死亡認定」は、行方不明のままであり、亡骸もない状態で、死亡と推定できるとの判断を下さなければならない、まさに苦渋の選択ではあります。しかし、どこかで納得をしなければ、自分たちの新しい一歩が踏み出せないままになるとの思いから、これまで何件も「死亡認定」により葬儀を行ってきました。家も流され、何もかもなくなった中で、やっと見つかった故人の写真や印鑑や愛用品などをお骨箱に入れて、故人とみなして葬儀を行いました。
自分ひとりだけで愛しい人の「死亡認定」をできるほど、人は強くありません。家族なり周りの人の想いを汲んで判断できることです。そして、葬儀は仏の世界に旅立ったんだということをしっかり受け容れていただけるようなものでなければなりません。そのために仏さまの世界に行くパスポートともいうべき「血脈(けちみゃく)」というものをお授け致します。お釈迦さまの教えである「法」を受け嗣いだことも意味します。そして「法」を受け嗣ぐことを「嗣法(しほう)」と言います。たとえ「死亡認定」では帳じりが合わないと思っても、亡き人がこの世で一所懸命生きてきたという帳じりをお釈迦さまが認めたからこそ「嗣法認定」の「血脈」が授かるのです。
それでは又、9月1日よりお耳にかかりましょう。
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