テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第971話】「往く道は」 2014(平成26)年12月11日-20日

住職が語る法話を聴くことができます

971.jpg
 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第971話です。
 「幸せの黄色いハンカチ」は1977年に上映され、大ヒットした映画ですが、5年後の1982年にテレビドラマにもなっています。映画で主演したのは高倉健さん、テレビは菅原文太さんでした。そのお二人が相次いで亡くなりました。健さんは11月10日83歳で、文太さんは11月28日81歳でのご逝去でした。
 健さんが演じた様式美あふれるヤクザ像に対して、文太さんは実録ヤクザをスピード感をもって演じていました。健さんが「静」なら文太さんは「動」という評価をされています。お二人とも映画の役柄は元より、実人生においても、男が惚れる男だったのではないでしょうか。不器用、実直、男気が溢れるような生き方をしていて、それがスクリーンからも伝わってきました。
 文太さんの晩年の職業は「農業」というほど、都会を離れて、農薬や化学肥料を使わない食物の栽培に打ち込んでいました。「人間は植物や昆虫と一緒なんだ。人間だけがおごるのは違う」と言って、戦争を憂い平和を願っていました。東日本大震災後は、被災地を訪れ、被災者に寄り添い、反原発を訴えていました。そして、仙台出身の文太さんは、故郷の人たちが苦しい生活を強いられているのに映画などを撮っている場合ではないと、「役者引退」を宣言しています。
 一方健さんは、新聞の震災報道で掲載された1枚の写真に出会い被災地への思いを強くします。それは気仙沼市で当時小学4年の少年が、瓦礫の中をペットボトルに水を入れて運んでいる姿です。みんなの役に立ちたいと黙々と井戸水を運ぶ健気な姿が、健さんの胸を打ったのです。その写真を切り抜き最後の主演映画となった「あなたへ」の台本に貼って持ち歩いていました。「毎朝、その写真を見るとぎゅっと気合が入る」と言って宝物のようにしていたそうです。その少年と手紙も交わしていますが、写真を見て常に被災地を忘れないことを心に刻んでいることや、少年への励ましと被災地の復興への思いが綴られています。
 映画に出演しないことで、被災地を思う文太さん。被災地で健気に生きる姿に出会った感動を演じる力にして役者であり続けた健さん。好対照ですが、お二人とも、実生活でもスクリーンでも心を尽くして誠を貫いていた姿がそこにはあります。
 「往く道は精進にして、忍びて終わり悔いなし」健さんが、天台宗の高僧から贈られた言葉で、座右の銘としていたものです。震災からの復興を思うとき、耐え難きを耐えなければならないこともあります。限りない精進も必要でしょう。最後に悔いがないと思えたなら、その時、健さんも文太さんも、天から黄色いハンカチを振ってくれるのではないでしょうか。
 ここでお知らせ致します。11月のカンボジア・エコー募金は、110回×3円で330円でした。ありがとうございました。
 それでは又、12月21日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【第1125話】
「投書というお供え」
2019(平成31)年3月21日~31日

news image

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1125話です。 今年のお正月の松が明けて間もなく、80代の女性の葬儀が仙台でありました。元々徳本寺の近くで生まれ育った方です。晩年ひとり暮らしをするようになってから、仙台にいる妹さんのそばに移り住んでいたのです。正月という時期でもありましたし、故郷を離れてからの歳月もあり、葬儀は極近い身内の方だけで、しめやかに営まれました。 ... [続きを読む]

【第1124話】
「億劫がらずに」
2019(平成31)年3月11日~20日

news image

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1124話です。 縦・横・高さが40里もある岩に、100年に一度天女が下りてきて、衣の袖で岩をひと撫でします。その100年一度を繰り返し、やがて岩が摩耗してなくなるまでの時間を1劫といいます。仏教に出てくる時間の単位です。それが億集まって億劫、つまり億劫(おっくう)という言葉になりました。誰しも... [続きを読む]

【第1123話】
「星の玉手箱」
2019(平成31)年3月1日~10日

news image

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1123話です。 今から60年も前のこと。「星は何でも知っている」という淡いラブソングが流行りました。歌詞の意味も分からず、ほんとうにお星さまは何でも知っているのだろうかと、子ども心に思ったものでした。逆に私たちは星のことなど何も知らないのです。亡くなった人はお星さまになって、見守ってくれるから... [続きを読む]