テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第866話】「アスリート」 2012(平成24)年1月11日-20日

20120111.jpgお元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第866話です。
最近、運動選手とかスポーツ選手という代わりに、「アスリート」という呼び方がもてはやされています。英語で「競技者」を意味します。何となくかっこいい響きが受けているのでしょう。そして、最近のアスリートは本業の競技における活躍もさることながら、インタビューの受け答えが、かっこいいのです。
東日本大震災直後は、スポーツなんかやっている場合ではないという雰囲気がありました。しかし、アスリートは自分たちができるのは、競技で力の限りを尽くすことであり、その姿で被災された方を少しでも励ますこと。そう願って自らも奮い立たせていました。単に勝ちたいということではなく、自分たちのひたむきさが、震災で落ち込んでいる日本全体を元気にするんだという気概は、かっこ良すぎるほどです。
中でも極めつけは、箱根駅伝で優勝した東洋大学の柏原竜二選手です。「山の神」と称され国民が注目する中、期待に違わず、山登りの5区で自身の記録を29秒短縮する新記録で、4年連続の区間賞を獲得し、優勝の立役者となりました。そしてインタビューに答えて曰く「僕が苦しいのは1時間ちょっと。福島の人たちに比べたら全然苦しくなかった。走りで元気を与えられればほんとうにうれしい」。彼は福島県いわき市出身です。当然東京電力福島第1原発事故の影響に苦しむ人々が故郷にはいるのです。箱根の山をあのスピードで駆け上がるのに苦しくないわけはありません。箱根の難所を「1時間ちょっと」で走るために、どれだけ苦しい練習を積んできたか。自分も苦しんでいるからこそ、人の苦しみも分かる発言です。
それでも彼の言う「1時間ちょっと」という時間なら想像がつきます。原発事故は時間では語れるものではありません。何年も何十年もという歳月で語らなければならないという現実は、想像を絶しています。原発事故は人間のある種の欲望がもたらした人災ともいえるものです。福島から届いた便りには、「二重生活で経費が困窮」「家で作った野菜を嫁が食べない」「3月の進学進級時での学校選択に悩む」等、身近で切実な声があります。そして福島に残っている人たちは、激減していく子どもの数に、福島が消えて無くなるのではと将来を不安視しているといいます。今福島は、人類史上かつてないような想定外の状況におかれていることを、私たちは強く意識しなければなりません。
それなのに、もうひとり国民が注目する我が国のリーダーは、早々に収束宣言などを出して、アスリートの受け答えとは比べようもないほど、被災地の苦しみに思いを致していないのではないでしょうか。リーダーなら国民の苦しみを我が苦しみと捉え、アスリートに負けない、日本の明日をリードする真の明日リードたらんことを願うばかりです。
ここでご報告致します。12月のカンボジア・エコー募金は、176回×3円で528円でした。ありがとうございました。
それでは又、1月21日よりお耳にかかりましょう。

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