テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1050話】「写経の力」 2017(平成29)年2月21日-28日

住職が語る法話を聴くことができます

 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1050話です。
 経典を書き写す写経は、1345年前の天武天皇2年(672)に行われていたと『日本書紀』にあります。印刷技術のない時代では、書き写すことがすべてなわけです。更に経典は仏の教えそのものであり、それ自体が仏であるという信仰がありました。依って写経にはたいへんな功徳があると考えられました。印刷の手段としてだけでなく、信仰・供養事として、何か願いを込めて写経するということも行われてきました。
 さて、私が兼務住職を勤める徳泉寺は、東日本大震災の大津波で本堂などすべてが流されました。しかし本尊のお釈迦さまだけは無事発見されました。みなさまの心の支えになりたい一心で踏み止まったと信じて「一心本尊」と名付けられました。その本尊さまを安置し、被災地のみなさんの拠りどころとなる本堂を再建しよう。そのため全国のみなさまに、はがきに一心に一文字を写経して、一口5千円の納経料を納めていただき、再建につなげようと発願しました。本堂再建の暁には、はがきは一心本尊さまの下に納めて永代に供養します。また大本山永平寺から贈られた樹齢650年という五代杉で木札をつくり、それにすべての一文字を刻印して、本堂の壁に掲げます。
 おかげさまで北海道から沖縄まで、多くの方に写経をしていただきました。そして、発願してから5年が経とうという今年になって、各地の新聞に「はがき一文字写経」の記事が掲載されました。東京・神奈川・千葉・埼玉や静岡・富山・大阪、そして福島・山形・秋田・青森などです。連日申し込みの電話が鳴り、続々はがき一文字写経が届きました。
 同じ曹洞宗ですので他人ごとに思えないという方。被災地に何ができるかわからないでいたが、これならできますという方。来年まで生きられるかどうかわからないので、最後に何か残しておきたいという女性。家中で写経しますという5人家族の方。最近子どもさんを亡くしてその供養にという母親。募金はあまり信用できずにいたが、こういう写経なら是非にという90過ぎの女性。みなさんそれぞれに、仏さまを拝み、自分を見つめ、復興を願い、尊い一文字を寄せて下さいました。
 更にはこういう方がいらっしゃいました。そのご夫婦はわざわざ一文字写経を書くために、寺を訪ねて来られました。なんと秋田県からです。朝に車で出かけてきて、その日のうちに戻るというのです。このはがき一文字写経は、申込者に専用のはがきを送り、それに写経して送っていただくというものです。全国どこからでも手軽に納経できるので、我ながらいいアイディアと思っていました。しかし秋田県のご夫婦は、写経の神髄を極めるが如く、寺という聖域で一心に筆を執ってこそ功徳があるのだということを示していかれました。一文字とはいえ、写経された文字は仏さまなのです。千年以上前からそのように受け継がれてきた仏事です。千年に一度の大震災を鎮める力も宿っていると信じます。
 それでは又、3月1日よりお耳にかかりましょう。
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     ※「はがき一文字写経」をご希望の方はこちら  徳泉寺 写経ページ

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