テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1075話】「結婚という成仏」 2017(平成29)年11月1日-10日

1075.jpg お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1075話です。
 お檀家のKさんの夫が突然畑に現れました。しかも見知らぬ女性と一緒です。そしてKさんに言いました。「今度、彼女と結婚することにした。今までお世話になったな。ありがとう」。いくらありがとうと言われても、Kさんには信じがたい夫の言葉です。改めて、その女性を見ると、眼鏡をかけていますが、優しく心癒されるような感じの方でした。
 そこで、Kさんは目が覚めました。東日本大震災で夫を喪ったKさんが、震災後初めて見た夫の夢でした。Kさんは自宅も流され、夫のほかに姑さんも亡くしています。震災1カ月後、犠牲者多数で地元の火葬場では間に合わず、山形まで行って火葬にしたのでした。やっと火葬にしたものの、避難所暮らしでは、遺骨をそばに置くこともできず、更に途方にくれました。
 そんな時、寺でお預かりしますよと声をかけると、たいへん喜んで安心されました。その後、葬儀を済ませたものの、お墓も流されているので、引き続き、遺骨は寺で預かりました。ひとまず、遺骨の心配がなくなったKさんはその後、見違えるように明るくなりました。前向きに新しい生活を営み始めたのです。
 震災2年目で、新天地に新居を構え、3年目には新しいお墓に、おふたりを納骨することができました。勿論、節目節目の供養は欠かさず続けてきました。そんなKさんの見た冒頭の夢のご自身による謎解きはこうです。
 実は震災でおふたりのほかに、可愛がっていた犬も一緒に亡くしているのです。夫の運転する軽トラックに乗っていたようなのですが、行方はわかりません。犬は牝犬でした。夢に出てきた夫のそばにいた女性というのは、その犬なのではないかというのです。これまで一度も夢を見なかったのは、決して忘れていたわけではなく、どこかにまだ生きている、生きていてほしいと願っていたからかもしれません。今、新しい女性と結婚するというのは、実際は可愛がっていた犬に巡り合うことができ、夫は夫でほんとうに成仏した姿なのでしょう。だから、夫に寄り添う優しい女性を見ても、少しもやきもちを焼くことなく、すべてにおいて安心できましたというのです。
 禅の世界に「一転語」というのがあります。迷っている者の心機を一転させる短い言葉をいいます。夫の結婚を成仏と言えるのは、Kさんの大震災からの無常を転じた一転語にも思えました。それは大震災後6年7カ月経った、77回目の月命日に見た夢が導いてくれたのです。
 ここでお知らせ致します。10年間のテレホン法話ライブを紙上再現した『月を流さず―和尚の語り草―』が出版されました。電話ではお伝え出来ない法話に因んだ写真も掲載された読みやすい本です。定価1500円。ご希望の方は徳本寺までお申し込みください。電話0223-38-0320です。
 それでは又、11月11日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【第1179話】
「波羅蜜生活習慣」
2020(令和2)年9月21日~30日

news image

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1179話です。 「人間の70歳は車で言えば中古車です。どこか故障してあたりまえです。車ならエンジンやブレーキが具合悪ければ、修理や部品交換はできますが、人間の場合、部品交換はたいへんです。だから日頃の生活習慣が大事なんです。生活習慣を疎かにして、がん検診を受けても本末転倒です」 先日、町の総合健診でお医者さんからそう言われまし... [続きを読む]

【第1178話】
「引き出物」
2020(令和2)年9月11日~20日

news image

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1178話です。 「これはファクシミリというものです。書いた文字をそのまま即座に送ることができます。私の寺では塔婆の申し込みは、名前の間違えなどがないように、すべてファクシミリでお願いしています。個人の家になくても、花屋さんなどには備えてありますから、そこから送れます」これは横浜のある寺院の法要... [続きを読む]

【第1177話】
「お地蔵さんのバトン」
2020(令和2)年9月1日~10日

news image

住職が語る法話を聴くことができます 紅唐辛子 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1177話です。 先日の暑い昼下がりのこと。Kさんという女性が訪ねて来られました。お地蔵さんの寸法を測らせてくださいというのです。そのお地蔵さんとは、30年前から山門前に立っている「わらしこ地蔵」のことです。それはお檀家のAさんご夫妻が、早くに亡くされた娘さんのご供養とすべての子どもた... [続きを読む]