テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1062話】「叢林」 2017(平成29)年6月21日-30日

1062.jpg お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1062話です。
 禅寺や修行道場を叢林(そうりん)と呼ぶことがあります。叢(くさむら)の林という字を書きます。やぶやはやしの中ということで、人が近づき難いという印象を与えます。
 曹洞宗を開かれた道元禅師は、24歳の時に中国に渡り、天童山の如浄禅師(にょじょうぜんじ)について厳しい修行をされ、お釈迦さまから伝わった「坐禅」という正しい仏法を受け継がれました。日本に帰ってその教えを伝える道場として開かれたのが、福井県の大本山永平寺です。今から約770年前の道元禅師が45歳の時です。
 道元禅師は如浄禅師より次のように言われていました。「城邑聚洛(じょうゆうじゅらく)に住することなかれ、国王大臣に近づくことなかれ、ただ深山幽谷に居りて一箇半箇を接得し、吾が宝として断絶せしむることなかれ」。つまり「都や人の集まるところに住むことなく、権力者などにも近づかず、山深いところに居て、たった一人にでも教えを伝えることができれば、それを宝の如くにして絶えさせてはならない」ということでしょう。
 まさに叢林そのものと言える永平寺は、三方を山に囲まれたところに、七堂伽藍はもとより、大小70余りの建物が並んでいます。建物は回廊で結ばれています。地形をそのまま活かして建てられているので、階段が多いのが特徴です。回廊の長さは約900メートル、階段は約500段もあります。その永平寺を先日檀家さんと一緒にお参りしてきました。
 夜の坐禅、食事作法の厳しさ、朝は3時起きなど、世俗を離れた世界です。叢林の印象を強くしたひとつは階段かもしれません。修行僧に案内され諸堂を拝観する時間がありました。何度も階段を上り下りします。参加者の一人の女性は、歩けるのですが、階段の上り下りが難儀でした。するとその女性に専属の修行僧がついて、親切に道案内をして下さいました。時にはエレベーターにも導いてくれました。みんなの列から遅れても慌てることなく拝観できました。更に、ある参加者の男性は、その女性とは初対面でしたが、常に荷物を持ってあげたりして、支えて下さいました。
 大庫院(だいくいん)いわゆる台所に当たる建物のところには、大きなすりこぎ棒がありました。元は明治35年に仏殿を建てた時の地突き棒だそうです。それにはこんな歌がありました。「身をけずり 人に尽くさんすりこぎの その味知れる人ぞ尊し」。足の不自由な女性を支えてくれた修行僧や男性は、まさにすりこぎの心を示していました。階段は人を遠ざけるのではなく、有り難い修行道場だと思わせるものがありました。自分を無にして、人に尽くす姿を見たからです。道元禅師が描いた叢林は、良い意味で裏切られ、多くの人が訪れるところとなりました。今永平寺には、坐ることと同じように大切な坐禅の心が、様々なところに生きているからでしょう。
 それでは又、7月1日よりお耳にかかりましょう。

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