テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第994話】「宿題と宿願」 2015(平成27)年8月1日-10日

住職が語る法話を聴くことができます

994_1.jpg お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第994話です。
 「宿題さえ なければ楽し 夏休み」今そう思っている子どもさんは多いことでしょう。昔そう思ったという大人の方も多いことでしょう。かくいう私もその一人です。どちらかと言えば、早めに宿題を片付けておきたい方でした。夏休み帳や工作・絵などは集中して早めに完了させることは可能でした。問題は絵日記です。
 1ヶ月分まとめて書くことはできません。ある程度その日その日の作業になります。中には、書くネタがなくなり、絵日記に書くためにどこかへ連れて行ってと、親にせがんだこともあったような気がします。まるで「ヤラセ」です。ともあれ、夏休みの後半は親子で宿題と格闘するなどという家庭もあるかもしれません。
 大人になって、宿題のない解放感を味わう代わり、1ヶ月も休める自由は失っています。しかし、よく考えると、休みのないことはその通りとしても、宿題は大人になってもつきまとってくるのではないでしょうか。やれ、何日まで仕上げなければならない仕事とか、次の会議には必ず出席しなければならないなどというのは、まさに宿題そのものです。
 そして、私たちは日々絵日記を書くような生き方をしなければならないのかもしれません。子どもの頃の夏休みの絵日記は、毎日が同じような生活なので、終いには書くことがなくなったと言って、「ヤラセ」に走ったりもしました。印象に残るような一日であれば、日記にも書き易いものです。しかし、書き易い書き難いは別として、日々同じように過ごしても、ほんとうは一日として同じ日はないはずです。
 カレンダーの日付が日々変わっていくように、同じ米のご飯を食べても、その日の天気や気分また相手によっても味わいは異なってきます。その微妙なところまでは、普段は気がつきません。でも毎日絵日記を書こうとしていれば、どんな些細なことにも、全身のアンテナが反応することがあります。そこが絵日記の功徳でしょう。毎日ごはんの味を書き続けただけでも、膨大な人生記録になるかもしれません。
 それにしても宿題は自分の好き嫌いで選択できないことが多々あります。今被災地にいる私たちは、誰も好まない震災により、復興しなければならないという大きな宿題を抱えています。復興するためにどうすべきかを、全身のアンテナで感じとり、一日も早く宿題を終わらせるべく、進むしかないという覚悟でいます。そして何年か後に、出来上がった宿題を故郷に提出できたとき、宿願を果たした喜びに浸りたいものです。ご褒美に長い夏休みをいただけたら最高です。
 それでは又、8月11日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【1317話】
「18歳と81歳」
2024(令和6)年7月21日~31日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1317話です。 「年齢7掛け説」というのがあるそうです。健康な現代人の年齢は、3割若く数えても大丈夫だということです。60歳なら42歳、70歳なら49歳、80歳なら56歳という風にです。50代・60代の頃はさもありなんと思っていましたが、さすがに70歳を超えると、8掛け・9掛けが現実に即している気がします。 さて、ある方から「... [続きを読む]

【1316話】
「不二山」
2024(令和6)年7月11日~20日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1316話です。 東京都国立市では、駅前から伸びる通りを富士見通りと称しています。晴れた日には富士山を望めるからです。2年前にこの通りにマンション建設の話が持ち上がりました。地元では景観をめぐって反発したものの、建築基準法上の問題はないということで着工、先月完成しました。しかし引き渡しまじかにな... [続きを読む]

【1315話】
「一心松」
2024(令和6)年7月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます 元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1315話です。 東日本大震災で大津波を目撃した人は、「松林の上から黒い煙が出ているように見えた」と言っていました。最大波12.2㍍ともいわれる津波が、わが山元町の沿岸部の松林を根こそぎ破壊しました。松は養分や水分がなくても育ち、塩害や風にも強いことから、防風林・防砂林として用いられてきました。し... [続きを読む]