テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第903話】「共に前へ」 2013(平成25)年1月21日-31日

住職が語る法話を聴くことができます

903n.jpg お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第903話です。
 最悪のことが絶妙のタイミングで訪れることはあるものです。1月14日にこの冬初めての雪らしい雪が、大雪となりました。一番降って欲しくない日に、朝から夜まで雪は降り続きました。その日は、女子ワールドカップ優勝、ロンドンオリンピック銀メダルのなでしこジャパン佐々木則夫監督の講演会を、地元の中学校の体育館で開催することになっていました。
 昨年3月に曹洞宗亘理郡内寺院主催の当世寺子屋講座に講師として、山元町にお出でいただいた縁によるものです。佐々木監督は、またチャンスがあれば、継続的に被災地を支援したいと願われていました。そこで、今度は山元町の坂元で、坂元ダイスキ実行委員会が受け皿となり、佐々木監督の講演会を実施すべく、準備を進めてきました。しかし、大雪です。開演は午後からですが、午前中の準備の段階で、スタッフすら会場に来られないという人が何人にもいました。これではお客さんも足を運ぶのがたいへんで、少ないだろうと覚悟しました。
 それでも、悪天候を厭わず、100人もの方々が訪れて下さいました。さすがに歩いて来たという人も多かったようです。中には10キロ近くの雪道を歩いて来られた方もいました。そんな人々の熱き思いに応えるかのように、佐々木監督のお話は、熱いものがありました。なでしこジャパンのメンバーは、強いだけではなく、世界で体格が一番小さいというハンディを克服して、しかもフェアプレイ賞に輝くほど正々堂々としたプレーで、メダルを獲得したことを、映像を交えて紹介して下さいました。
 また、監督自身は父の背中に学んだそうです。工務店を営んでいた父は、常に従業員を大切にする広い心を持っていました。自分もそのような心で指導者になりたいという夢を抱きます。しかし、その道は決して順調ではなく、高校、大学受験、就職もことごとく失敗します。それでも、諦めなかったのです。それは抱いた夢と目標をいつも見据えていれば、遠回りしても導かれていくとの信念があったからなのでしょう。講演の演題は「共に前へ」ということでした。被災地の人々も、一人ひとりが、諦めることなく、できることをやることによって、共に前へ進めるという思いを強くさせるメッセージと受け止めることができました。
 この度の講演会では、雪の中、諦めることなく、歩いて来られた方の熱意に打たれました。また、始まる前から、お客さんが帰るまで、外でずっと雪かきをしていたスタッフの若い男性数人の姿に、感動させられました。みんな、困難があっても一人ひとりができることをやろうというこの思いがあれば、きっとこの被災地も、共に前へ進めると、ほっと熱い胸をなでしこでした。
 それでは又、2月1日よりお耳にかかりましょう。

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