テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第859話】「その一足」 2011(平成23)年11月1日-10日

住職が語る法話を聴くことができます

 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第859話です。20111101.JPG
 10月31日に世界人口が70億人に達しました。ここ20年程の間に20億人増え、40年後には93億人になり、21世紀末には100億人を超えるとか。片や、日本人の人口は、初めて減少したという昨年10月1日現在の国勢調査の確定結果が発表されました。日本人と外国人を分けた全く日本人だけの人口です。それによると、1億2535万人で5年間で37万人も減っているそうです。
 さて、日本の中の我が山元町はどうかと言えば、当然の如く、人口減少の傾向です。特に今回の東日本大震災の影響は人口減少に拍車をかけた感があります。震災前は1万6700人程だった人口も、震災後は約2千人減っています。世帯数も5500戸から減って4900戸余りになってしましました。震災で亡くなった方が600人を超えていますので、それだけでもたいへんな数です。加えて、町内の家屋の4割に当たる約2200棟が全壊しました。半分は津波による流出です。集落のほとんどが流されて、そこに住むことができない状況のところもあります。駅も線路も無くなり、職場や学校に通う都合で、町を離れた方もいますので、明らかに町の人口は減っています。
 大津波はありとあらゆるものを流してしましました。家屋敷という大きな財産から、その中にあった貴重品から日用品まで、その人だけの想い出の品など、ほんとうに一瞬にして波に呑み込まれてしまいました。ある人が言いました。「何がショックかと言って、故郷がなくなってしまったことが辛い。生まれ育ったところに立ってみても、すっかり景色が変わってしまい、どこにも故郷がないんだよ」。これまでの自分の人生が全部なくなってしまったかのような落胆ぶりでした。
 人は限られた命を精一杯生きて、やがて死にます。しかし故郷はそのままの姿で、死んだ自分をやさしく包み眠らせてくれる、そう信じていました。それが、目の前で故郷がなくなる体験をしようとは、夢にも思わないことです。荒れ果てた故郷に人は住まず、捨ててゆくのでしょうか。
 別の方が言いました。「今は町を離れているけれど、必ずこの町に帰って来たい。ここが私の故郷なんだから」。人口が減ろうが増えようが、「故郷はここだ」と今こそ思う時でしょう。故郷は動きません。ただ景色が変わってしまっただけです。先人が荒野を切り拓き、住みついて故郷を築いてきたように、これから私たちの歩く道が故郷になるのです。
 世界人口の増加は、食糧問題・環境問題等おける課題を浮き彫りにします。人が減っていく故郷も前途多難です。私たちは単に故郷の一員と言うだけでなく、70億人の一人として、生きている今を迷わず歩くしかありません。「この道を行けば どうなるものか 危ぶむなかれ 危ぶめば道はなし 踏み出せば その一足が道となり その一足が道となる 迷わず行けよ 行けばわかるさ」(清沢哲夫)。
 それでは又、11月11日よりお耳にかかりましょう。

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