テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第797話】「日本一短い最期の手紙」 2010(平成22)年2月11日-20日

 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第797話です。
nehannosyaka.JPG
 「イナイイナイバー!酸素マスク外し、3歳の孫を笑わせたね。母の最期の笑顔だった」。これは福井県丸岡町の「日本一短い手紙のコンクール」で、「笑い」をテーマにした「一筆啓上賞」の入賞作品です。43歳の女性がお母さんに宛てた手紙です。病床にありながらも気丈な母親は、ふざけて酸素マスクを外して、孫を笑わせ、自分も笑顔で最期を迎えたというのでしょう。笑って死を迎えられたら本望ですが・・・。
 2月15日はお釈迦さまがお亡くなりになった日です。お寺では涅槃図(ねはんず)というお釈迦さまがお亡くなりになった様子を描いた掛け軸を掲げ、ご遺徳を偲ぶ法要が営まれます。沙羅双樹の中のお釈迦さまのご遺体を囲んで、大勢のお弟子さんや動物や鳥たちまでも嘆き悲しんでいます。しかし、たった一人微笑んでいる方がいます。それは当のお釈迦さまです。
 お釈迦さまはどうして微笑まれたのでしょう。『遺教経』というお経に「度すべき所の者は皆已に度しおわって沙羅双樹の間に於いて将に涅槃に入りたまわんとす」と示されているように、お釈迦さまは最初に説法した阿若憍陳如(あにゃきょうぢんにょ)というお弟子さんから、亡くなる直前にお弟子にした須跋陀羅(しゅばつだら)に至るまで、45年もの長きにわたって、教え導くべき所の者は、すべて導き尽くした。成すべきことを精一杯やった今は、何ら思い残すことはないという心境だったのでしょう。「涅槃」とは、死を意味しますが、煩悩の欠片(かけら)もなく、思い残す何物もない、全く清々としたお釈迦さまのような死を言います。
 さて、私たちの最期はお釈迦さまのように、微笑みを湛えて迎えられるでしょうか。いささかの財産を残そうなどと思い煩っていては、とても涅槃に入ることはできません。何は残さなくても、せめて「日本一短い手紙」を残してみませんか。世界一と言っても通用するかもしれません。それは「○」ひとつです。ひとつの円を描くのです。大きい小さいは別として、一筆で描くことができます。「ОK」のサインでもあり、「自分の人生は満足だった。みんなのおかげに感謝するよ」というメッセージにもなります。さらには一円相といって始めもなく終わりもない状態を示します。「わが命、死んでも死なないぞ」と、まさにエンドレスの境涯をみなさんに印象付けることでしょう。
 ここでご報告いたします。1月のカンボジア・エコー募金は、75回×3円で225円でした。ありがとうございました。
それでは又、2月21 日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【1317話】
「18歳と81歳」
2024(令和6)年7月21日~31日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1317話です。 「年齢7掛け説」というのがあるそうです。健康な現代人の年齢は、3割若く数えても大丈夫だということです。60歳なら42歳、70歳なら49歳、80歳なら56歳という風にです。50代・60代の頃はさもありなんと思っていましたが、さすがに70歳を超えると、8掛け・9掛けが現実に即している気がします。 さて、ある方から「... [続きを読む]

【1316話】
「不二山」
2024(令和6)年7月11日~20日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1316話です。 東京都国立市では、駅前から伸びる通りを富士見通りと称しています。晴れた日には富士山を望めるからです。2年前にこの通りにマンション建設の話が持ち上がりました。地元では景観をめぐって反発したものの、建築基準法上の問題はないということで着工、先月完成しました。しかし引き渡しまじかにな... [続きを読む]

【1315話】
「一心松」
2024(令和6)年7月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます 元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1315話です。 東日本大震災で大津波を目撃した人は、「松林の上から黒い煙が出ているように見えた」と言っていました。最大波12.2㍍ともいわれる津波が、わが山元町の沿岸部の松林を根こそぎ破壊しました。松は養分や水分がなくても育ち、塩害や風にも強いことから、防風林・防砂林として用いられてきました。し... [続きを読む]